Granatapfel … ＊6

もうひとつのお話 ページ45

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『…戻りました…っ？！』

Aがリハーサルに戻ってくるなり、シュンを初めとして、将吉や、他のダンサーたちもAに飛びついていく。

SH「…嫌だ…」
『え…？何…？』
SH「まだAと歌いたい曲、たくさんある…」

将吉の一言で、何があったのか悟った様子で、こちらを見る彼女と、目が合う。

KC「…ちゃんと話してやって。待ってたから。」

投げやりに、そう言ったわけではない。
きちんと、彼女の考えを、彼女の想いを、仲間たちに知ってほしいと。
そう思ったから。

『…黙ってて、ごめんなさい。』

バンドメンバー、ダンサー、サポートメンバーたち全員が揃っている今日こそ、その場に相応しいと。
そう思っていたから。

『…ツアーの打ち合わせが始まったときから、ずっと、ずっと考えてました。自分の、これからの道のこと…』

俯いて話し出した彼女のそばに寄り添って、手を握る。

KC「…脚、痛いんでしょ？座ろう？」

何も言わなくたって、Aのことなら、俺は何だって分かるんだ。
そう、周りにも伝えるように、そっと手を引いて、一緒に床に座る。
つられるように、他のメンバーたちも、座ったり…Aの姿がよく見えるように、各々の位置を決めていく。

『…結論から言うと、今回のツアーが終わったら、私はセカンドでの活動を終わりにします。ここまでずっと頑張ってこれたのは、ここにいる皆さんもそうだし…今まで出会ってきた皆さんが支えてくださったからです。本当に感謝してます。』

彼女の言葉に、戸惑いながらも、しっかりと受け止めようとするメンバーたちの表情を目に焼き付ける。

『…自信が、なくて…ずっとずっと…ステージに立つのが怖い毎日で…歌うことも、踊ることも、怖いと思うようになってしまって…そんな時にね、将ちゃんと一緒に曲作りしたり、ランページやファンタスティックス…若い子たちのプロデュースに関わることも増えて…今まで支えてきてくれた将ちゃんや、ランページのみんな、せっちゃんにタイキちゃんに…そして、何より事務所の方々に恩返しができてる…力になれてるんだ、と思えて…すごくすごく嬉しかったし、やりがいも感じました。』

頑張れ。
そう、心の中で呟きながら、彼女の小さな手を握りしめる。

『…今まで、私を輝かせてくれた人たちに恩返しがしたい…今度は私が皆さんを輝かせたいって、そう思ったから…だから、ボーカリストとしてではなく、裏方として…今後は頑張ろうって…思って、ます…』

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