Granatapfel … ＊6

震える声 ページ20

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映画の撮影が始まると、2人きりのシーンも多く。

スタッフさんも交えながら、臣さんと話すことにも慣れてきた。

昔のように、何でもない、趣味の話なんかをしながら盛り上がることもあって。

酷いことをされたなんて、嘘みたいにも思えて。

「登坂さん、ソロの配信始まりましたね〜！どんな感じなんですか？」
OM「買ってください(笑)」
「えー！テーマだけでも…！」

台本を確認していると、スタッフさんと臣さんが話す声が聞こえてきて、そっと顔を上げて、2人を見つめると。

ほんの一瞬、臣さんと視線が絡み合う。

すぐにその瞳は伏せられて、どこか悲しそうに微笑む臣さん。

OM「…俺の今の気持ち…ってとこかな。」
「…今の気持ち？」
OM「頑張ってきたよー、これからももっと頑張るよー的な。」
「え、全然分かんないんですけど(笑)」
OM「だから買ってくださいって(笑)」

笑いながらスタッフさんと話して、臣さんはスッと立ち上がり、私の隣の椅子へと座る。

OM「…何してんの？」

その声は、慎重に発せられていることが分かるくらいに、少しだけ震えていて。

そっと触れられた指先が、少しだけ冷たかった。

『…臣さん、あの…』
OM「…次ってどのシーンだっけ？」

核心に迫ろうとすれば、さらりと交わされてしまうけれど。

『…臣さん、LUXEって…』
OM「…何？」
『…あの…なんか…なんて言ったらいいのか…』
OM「何だよ(笑)」

笑って交わされようとしても、めげずに話し出す。

『…1人じゃないです…』
OM「…？」
『…私なんか、三代目さんとは知名度とか天地の差があるけど…やることなすこと、いろんなこと言われたり…満たされる一方で、失うこともあって…自分が、自分じゃなくなっていくような…そんな感覚…私も、たまに…感じることがあって…そう思ってしまうのは…臣さんだけじゃないし…隆二さんとか、エリーとか、タカヒロくんとか…本当の、臣さんを分かってくれてる人も、たくさん…たくさんいるから…だから…』

以前、聴かせてもらった曲の歌詞を思い起こしながら、臣さんに、そう言うと。

『…ごめ、なさい…泣くつもり無かったんですけど…』

涙が溢れ出てきて、止められなくなる。

目元を覆いながら俯いた時、グッと引き寄せられて、臣さんの腕の中に収まると。

OM「…お前、ずるいよ…」

そっと耳元で囁いた声が、少しだけ震えていた気がする。

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