Granatapfel … ＊6

聴かされる ページ19

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OM「…ねぇ、隆二のソロのコメントは出してたのに、俺のは出してくんないの？」

撮影の合間に、ズカズカと歩み寄ってきては、唐突にそんなことを言われた。

隆二さんのソロプロジェクトにかける思いは、色々と話を聞いていたし、満を辞して配信された楽曲がとても素晴らしいものだったから、SNSでコメントしていたが、それは臣さんのソロ第1弾の時も同じだったはずだ。

『…え…だって…一曲目のときは臣さんにもコメント出したし…』
OM「…またコメントしてよ。」
『…まだ…配信されてないから…聴いてないですもん…新曲…』
OM「聴いて。今すぐ。ここで。」

こうと決めたら一直線で、無茶苦茶な注文を突きつけられることにも慣れてきた。

隣に座り込み、無理矢理にイヤホンをはめられ、臣さんがプレーヤーをスタートさせれば、耳に音が流れ込む。

その音は、アップテンポなのに、相変わらずどこか物悲しくて。

臣さんそのもののような気がして。

『…やっぱり、ファンの皆さんを差し置いて、抜け駆けできません…！』
OM「何それ(笑)」

聴きながら、拾った歌詞が、とても苦しくて。

泣き出しそうになってしまい、臣さんにはめられたイヤホンを外して、適当な理由をつけて突き返す。

『…配信されたら、しっかり聴きます…』
OM「…うん。そうして…」

一時期離れた距離感が、ここ最近、昔に戻ったかのように近付き出していて。

納得しながらも、臣さんは、弱々しく言葉を吐き出して、私の肩にもたれかかってくる。

『…ちょ、臣さん…』
OM「…このままでいさせて…ちょっとだけ…」

囁いた声が、あまりにも弱々しくて。

拾った歌詞を思い出しては、胸がぎゅーっと締め付けられるように苦しくなる。



この人は、今。



どんな思いで、ここにいて。

どんな思いで、ステージに立って。

どんな思いで、歌を歌うんだろう。



何を見て。

何を感じて。


何を考えているんだろう。




無邪気に、何でもない話をして。

くだらないことで笑い合って。

音楽について、隆二さんと一緒に、熱く語り合っていた、あの頃の臣さんは。



どこに行ってしまったのだろう。



考え出したら、また涙が溢れ落ちそうになって。



そっと、手を握りしめられながら、擦り寄ってきた臣さんを。


無闇に突き放すこともできず、その手をぎゅっと握り返した。

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