昔みたいに ページ19
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樹「…A?」
『あ、いっちゃん…』
樹「…帰り?」
『…うん。コーヒーでも飲んでこうかなって。』
樹「…俺も行っていい?」
事務所からの帰り道、リハ終わりのいっちゃんに遭遇して、そう声をかけられた。
一緒にいたくて。
理由をつけて、いっちゃんからお伺いを立てられるのを待つ自分はズルいのだろうか。
大阪で告白されてから、返事らしい返事はまだ出来ていなくて。
それでも想い合えているのだ、と。
妙にそわそわした気持ちになってしまう。
隣を見上げれば、福岡にいた頃を思い出して。
同じくらいだった背も、あっという間にいっちゃんの方がずっと大きくなっていた。
樹「…決めた?」
『うん。』
お店に着いて、注文した後も2人の間に言葉は少ないけれど、すごく落ち着く。
幸せだなんて気持ちを噛み締めるように、窓の外の空を見上げると、くすくすと笑う声が聞こえる。
樹「…昔から、だよね。」
『…え?』
樹「2人でいるとき。喋りもしないで、幸せそうに空見上げてた。」
些細なことかもしれない。
『…いっちゃんも、昔から。』
樹「ん?」
『そうやって、くすくす笑うとこ。ずっと、変わってない。』
どこか、くすぐったくなるような空気の中、注文したコーヒーが届いて。
2人でくすりと笑って、コーヒーに口をつける。
喋らなくても、お互いのことを分かり合えているような。
どこかホッとするような。
ぽかぽかと、あったかくなるような。
そんな気持ちを感じながら、お店を後にする。
『じゃあ、私…こっちだから。』
少し、寂しくなりながら、そう告げると。
樹「…送ってく。」
ぽそりと呟いて、手を引いて歩き出す。
『…私の家、知らないじゃん。』
樹「…教えてよ。」
『…うん(笑)』
いつの間にか、指を絡めるようにして繋いだ手に、気付いてはいたけれど。
離れたくない。
そんな気持ちが強くなって、ぷらぷらと、繋いだ手を大げさに振って歩いていく。
昔に戻ったみたいで、幸せな時間だった。
「…っ!」
前から歩いてきた女性に、すれ違い様に、ドンッとぶつかられた拍子に、いっちゃんと繋いでいた手が離れ、よろめいてしまう。
『…ぁ、ごめ…っ!』
謝ろうとした時。
樹「Aっ?!」
突き飛ばされて、髪を掴まれて。
「…あんたなんか…!」
樹「やめろっ!」
振り上げたハサミが嫌な音を立てた後。
頬に痛みを感じるとともに。
ハラハラと、髪の毛が舞い落ちた。
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usa(プロフ) - 突然のコメント、失礼いたします。つい先日この作品に辿り着き、とってもハマって何度も読み返しています!続きのパスワードについて、私も教えていただきたいです!引き続き、更新を心待ちにしております! (2020年10月11日 23時) (レス) id: a03a04a4f7 (このIDを非表示/違反報告)
sui(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ずっとこの作品が好きで、何度も見返しています。続きの2のパスワードは教えてもらえないでしょうか…? (2020年10月6日 11時) (レス) id: 2efd24e246 (このIDを非表示/違反報告)
冬 - はじめまして(*^^*) いきなりすみません...。 物語読んでいて思ったのですが...。 メンバーさんそれぞれの台詞の時行間隔あけて はどうでしょうか? 行間隔が詰まっていると読みにくいので...。 (2020年5月1日 16時) (レス) id: 4332e38eb8 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆんさん» もう、リアルいっちゃん見るたびに早くイチャイチャさせたくて仕方なくなります(笑)あのビジュアルで、お前しか考えられないとか言われたら…もうぶっ倒れもんですよね…! (2019年9月4日 2時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - みなさん» 絶賛作成中です!ひと段落ついたらパス外しますので、しばらくお待ち下さい! (2019年9月4日 2時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2019年6月10日 0時