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ステージ上でスタッフさんと機材のチェックをするAさんを、客席から見つめる。
出会った頃よりも少しだけ伸びた黒髪が、見た目以上に艶やかで、触り心地の良いことを、俺は知ってしまった。
機材やベースに触れる小さな手が、少し冷たくて気持ちがいいことも。
大きな丸い瞳に、涙が蓄えられて色っぽくなることも。
マスクに隠されている唇の柔らかさも。
全部、知ってしまった。
そして、俺だけのモノにしたいと、知らず知らずに願ってしまっていた。
けれど。
肘掛にもたれかかるように、頬杖をつきながら、山彰の言葉を思い出す。
俺は、Aさんの何を知っていて、どうしたかったんだろうか。
リキヤ「何浸ってんの。」
健太「…何もないっす…」
リキヤ「嘘つけ(笑)」
ドカッと音を立てながら隣に座り込んだリキヤさんは、Aさんは辞めとけと言った、いわば敵だ。
リキヤ「…何年一緒にいると思ってんの。健太が考えてることくらい分かるよ。」
健太「分かってて、諦めさせようとしてるくせに。」
リキヤ「別に諦めさせようなんてしてないよ。」
健太「…リキヤさんが、辞めとけって言ったんじゃん!」
思わず溢れてしまった大声に、ステージ上のスタッフさんたちが、こちらに視線を向ける中、彼女だけは視線を伏せていて。
リキヤ「…寂しいもん同士、慰め合ってるだけじゃ…この先は厳しいと思う。」
ふらっとステージを後にする彼女を、目で追い続けてしまう。
リキヤ「…2人とも、似すぎなんだよ。」
スタッフさんに声をかけられて、振り返った彼女と、一瞬だけ目が合った。
リキヤ「どこか寂しそうで、愛を求めてる。」
それは、本当に一瞬の出来事だったけれど。
リキヤ「…だから、2人で、どんどん悪い方向に進んでいっちゃわないか、正直不安でしかないよ。」
健太「悪い方向って…」
リキヤ「…全部捨てて、Aさんのために、健太が“ココ”から居なくなるんじゃないかって、俺は思ってる。」
健太「そんな…」
リキヤさんに言われた言葉の衝撃で、彼女に向けられていた意識が、リキヤさんに戻される。
リキヤ「…何からも逃げずに、Aさんを愛して、支えていく覚悟が…お前にあるのか?」
真剣な表情に、思わず顔を伏せてしまうと。
リキヤ「…その覚悟がないなら、お前にAさんは百年早い。辞めとけ。」
頭をポンと叩かれ、リキヤさんは立ち去っていった。
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ゆあ - 切ないです、、 (2019年6月18日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» めちゃくちゃお久しぶりの更新になってしまってすみません!ちょっとずつ進めてますので、またどうぞいらしてください♪ (2019年6月10日 23時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ - めちゃくちゃ久しぶりです! (2019年6月10日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» ちょこっとずつの更新ではありますが…どうぞお楽しみください☆ (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆずさん» リキヤさんにはやっぱり健太さんを締めていただかないと…!そして、突然のチャラいっちゃんに変貌ですみません(笑)いっちゃんに荒らしてもらいますよ〜! (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2019年2月9日 1時