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健太「…ファイナルは、Aさんじゃないの?」
隣同士、床に座り込んで、手を握ったり、撫でたり…そんな時間を過ごしながら、彼女に尋ねた。
『次が最後。ファイナルは、やっぱりカツさんが出るのが当然だと思うし…』
健太「見にも来ないの?」
『うーん…スケジュール次第かなぁ…』
健太「えー、ランペのライブに行くっていうスケジュール入れてよ。」
この人には彼氏がいる。
俺のモノにはならない。
そればっかり考えて、落ち込んだり、気を遣ったりしていた頃とは違って、かなりフランクに話している気がする。
彼女が、俺の名前を呼んでくれたから。
彼女が、俺に触れてくれたから。
彼女が、キスに応じてくれたから。
きっと俺と気持ちは同じだと思って、気が緩んでいたのかもしれない。
健太「けんたもさ、昔ベースやってたんだよね。」
『あ、いっちゃんから聞いたことある。ドラムもできるんでしょ?すごいね、け…』
健太、と、呼ぶのを躊躇われたような…そんな気がしたけれど、気づかないフリをして。
健太「…♪〜♪〜…」
鼻歌を口遊みながら、Aさんの手をギュッと握る。
『…歌、上手だね。』
健太「…元々ボーカル志望だったからね。」
『もう、諦めちゃったの?』
健太「いや。けんたの夢は歌って踊れるスーパースターだから。」
『スーパースター?』
健太「そう。Aさんが、迷わず飛び込んで来れるような、ビッグな男になるよ。あの人に負けないくらい…」
だから、俺を選んでよ。
そう言おうとした言葉は、Aさんに手を引かれて、重なった唇で遮られた。
『…練習、しなきゃ。』
そう言って立ち上がったAさんを追うように、俺も立ち上がる。
細い腕を引いて、薄っぺらい腰を抱き寄せると、艶のある黒髪が揺れて、丸い目が、こちらを見上げる。
健太「…Aさん、ズルイ。」
『…知ってる。』
目を伏せて、そう言って弱々しく微笑んだAさんが、いまにも消えてしまいそうで。
健太「…俺なら、そんな顔させないよ?ずっと一緒にいるから…だから…」
彼女を安心させようと発した言葉は。
『…違う…そうじゃないの…』
彼女に受け止めてはもらえなくて。
『…彼、もう気付いてる…だから…』
分かってた。
始まったとしても、すぐに終わるなんてこと。
でも。
健太「…俺…そんな簡単に諦められるような…軽い気持ちじゃないよ…?」
伝われ…と願いを込めて、ギュッと彼女を抱きしめた。
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ゆあ - 切ないです、、 (2019年6月18日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» めちゃくちゃお久しぶりの更新になってしまってすみません!ちょっとずつ進めてますので、またどうぞいらしてください♪ (2019年6月10日 23時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ - めちゃくちゃ久しぶりです! (2019年6月10日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» ちょこっとずつの更新ではありますが…どうぞお楽しみください☆ (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆずさん» リキヤさんにはやっぱり健太さんを締めていただかないと…!そして、突然のチャラいっちゃんに変貌ですみません(笑)いっちゃんに荒らしてもらいますよ〜! (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2019年2月9日 1時