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いざステージが始まる前に、そっと彼女の様子を伺うと、リキヤさんと陣さんと、他のバンドメンバーさんに囲まれた小さな背中が見える。
『緊張しますねぇ…』
「とか言って、Aちゃんゴリゴリにかますでしょ?(笑)」
『皆さんの足を引っ張らないように精一杯かまします!!!』
陣「楽しみにしてるんで、よろしくお願いします!」
リーダーたちや、バンドメンバーさんたちとハイタッチを交わして、そっとベースに触れる手が震えていることに気付くと。
健太「…あの。」
『…?!』
居ても立っても居られず、彼女に近寄って、ヒソヒソと声をかけつつ、震える小さな手を握る。
驚いてこちらを見上げる彼女の瞳は、舞台裏とは違って、バッチリとメイクを施され、“大人の女性”というか…色気も含んでいて、思わずドキリとしてしまう。
健太「…緊張、して…ますよね…?」
『…あ…と…まぁ…』
両方の手を取って、握りしめると、ひんやりとした感触が伝わってくる。
この手を、あたためたい。
そう思ってしまったら、止められず、冷たい小さな手を擦るように、何度も何度も撫でて、温もりを分け与えようとしていた。
困ったように、その手と、俺の顔を、何度も何度も行き来する視線は先程の色気は消えていて、彼女の純粋さも見えてくる。
健太「…手、冷たいと弾きづらいかなって。」
『…ありがとう…ございます…』
尤もそうなことを言って、両手を繋ぎ、正面に向かい合うと、視線がバッチリと絡み合う。
ほんの一瞬の出来事だったけれど。
ずっとずっと、見つめ合っていたい。
もっともっと、触れていたい。
彼女の大きな瞳に吸い込まれるように見つめながら、そう思ってしまった。
すっと片手を離し、その頬に触れようとしたとき。
山彰「…健太?円陣やるよ?」
健太「…あ…今行く…」
山彰の声が聞こえて、慌てて繋がりを解く。
健太「…すいません…俺…」
海青「健太さん早くーーー!」
この場から離れられないでいた俺の言葉を遮るかのように、海青の声が聞こえる。
『…ふふ(笑)早く行かないと、怒られちゃいますよ?』
健太「…でも…」
『ほーら、行ってらっしゃい!』
くるりと向きを変えられて、ポンと背中を叩かれる。
その声と、その手の優しさが心地良くて、名残惜しくて。
数歩歩いて振り返れば、パタパタと手で顔を扇ぐ彼女の姿が見えて、可愛いな、なんて思いながら微笑んでしまった。
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ゆあ - 切ないです、、 (2019年6月18日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» めちゃくちゃお久しぶりの更新になってしまってすみません!ちょっとずつ進めてますので、またどうぞいらしてください♪ (2019年6月10日 23時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ - めちゃくちゃ久しぶりです! (2019年6月10日 0時) (レス) id: 0eaf3d3c12 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆあさん» ちょこっとずつの更新ではありますが…どうぞお楽しみください☆ (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃんちゅう(プロフ) - ゆずさん» リキヤさんにはやっぱり健太さんを締めていただかないと…!そして、突然のチャラいっちゃんに変貌ですみません(笑)いっちゃんに荒らしてもらいますよ〜! (2019年5月15日 22時) (レス) id: 8820865f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2019年2月9日 1時