残された者 ページ1
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少し前に、Aがこの街から消えた。
あれだけ、彼女の手を離してはいけない、と。
彼女を1人にしてはいけない、と思っていたのに。
荒らされた店に、誰もいない部屋。
彼女の父親も、彼女が忽然と姿を消したことにより、すっかりと憔悴しきっていた。
「…あいつがまだ、こーんなに小さかった頃にさ、母親を亡くして。そっから、ずっと気張ってたんだよな…。寿子が母親代わりみたいなことしてくれてたけど、親父の俺にも気ぃ遣って、いっつもニコニコして。真面目に勉強して。高校卒業してからも、ずっとこの店に留まり続けてくれた。」
訪れた部屋で、酒を呑みながら、彼女の父親はゆっくりと話し出した。
「…アイツに…琥珀に会ってから…ちょっとずつ、変わったんだよな…。」
俺も知っていることから、知らないこと。
「…琥珀と家に帰ってきた時、驚いた。…母親そっくりの、女の顔も見せるようになった…。」
知りたくなかった事実も、ハッキリと思い知らされた。
「…いつか、アイツを追いかけて…こっから居なくなるんだって…覚悟はしてたんだけどな…こんな急に…何も言わずに居なくなるなんて…。」
彼女の父親の言葉は、考えたくなかったけれど、いつも頭を過ることだった。
真っ直ぐで、泣き虫で、寂しがりやで、甘えん坊な彼女のことだ。
どれだけ悩んで、涙しながら、この場所に、この街に、留まっていたのだろう。
コブラ、あのね、
琥珀さんのこと、好きになっちゃった…
コブラ、あのね、
琥珀さんと、付き合うことになったの!
ねぇ、コブラ…
いなく、なっちゃった…
置いてかれちゃったよ…
ねぇ、コブラ…
1人にしないで…
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麗 - もう更新はされないのでしょうか? 最初から一気に読ませてもらいましたがとても続きが気になります。更新されるの待っていますね。 (2019年5月12日 20時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - 更新されないんでしょうか? (2017年12月24日 3時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮夢叶(プロフ) - 続きが楽しみです!更新頑張ってください! (2017年8月6日 16時) (レス) id: 556da1689c (このIDを非表示/違反報告)
白濱ゆあ(プロフ) - 更新楽しみにしています!!!頑張ってください(*^^*) (2017年6月12日 3時) (レス) id: 0c3fdd77dd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2017年3月13日 0時