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嘘か本当か ページ29

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樹「…あー、くっそ…」


ラインを送っても既読はつかない、電話は出ない。

家に行こうにも、ファンや記者らしき男が張り込んでいて迂闊に近づけない。

事務所で見かけても、スタッフさんの壁が厚く、全く近付けない。

それはAだけじゃなくて、なっちゃんも同じで。


苛立ってくるとともに、何かがおかしいと思わざるを得ない状況で。


慎「…明らかに、おかしいですよねぇ。」

陸「ファンタとGENEさんだけ、妙に隔離されてるよねー。」

北人「樹、浮気されてんじゃないの?」

翔平「だとしても、スタッフさんまで徹底して俺らが近づけないようにガードしてるのおかしいと思うんですよねー。」

海青「ジムの時間も全く被らないし…」

陣「いや、これ全員で話し合うことか?!」


ツアーの合間、メンバーが集合した時にも謎は解けなくて。


壱馬「なー、樹?」


こっそりと近付いてきた壱馬さんが、小声で話し出したのは。


壱馬「…これ、事務所命令ぽい。」

樹「…え…?」

壱馬「…2人の話題で、別の記事とか噂とか…もみ消そうとしてるっぽい。」


何か理由があると思っていたものの、にわかには信じがたい話で混乱する。


壱馬「…玲於さんから、こっそり連絡が来て…Aさんも、樹だけじゃなくて俺らと連絡取ったりするのも禁止されてるって。」

樹「…なんで…Aとなっちゃんが…?」

壱馬「…ドラマのタイミングもあったと思う。放送に合わせて記事出てきたし、配信の方でドラマも伸びてるらしいし…」

樹「…2人は、納得して…こんな…」


上からの指示だと知っても、仕方ないとは到底思えなくて。

2人がどんな気持ちでいるのか…それを知りたいような、知りたくないような…そんな気持ちもうまく言葉にできなくて。


壱馬「…玲於さん、樹のことも心配してたから…」


ずっと一緒にいたわけじゃないのに、ここ数日連絡が取れないだけで、こんなにも参ってしまっているんだから。

別れろ、なんて指示されたときには…頑張る意味も、冗談じゃなく生きる意味さえも失ってしまう気がする。


壱馬「…LINE、既読つかなくてもちゃんと通知で確認してるって。それ見て、Aさん1人で泣いてたって…」


ずっと一緒にいたいから、我慢。

その時が、来るまで。

呪文のように2人で繰り返してきた言葉が、今また重くのしかかってくる。


それでも、俺の言葉は、届いている。


玲於さんと、壱馬さんの言葉を信じて。

もう少しだけ。

もう少しだけ。

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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2021年5月29日 1時

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