つづき ページ26
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『本っっっ当にごめんね?』
樹「いや、別に…」
恥ずかしさで頭いっぱいになって、ちょっと何で怒っていたのかも忘れてしまった時に甘ったるい声で話し出すAに、少しだけドキドキする。
『…樹、今実家にいるの?』
樹「…うん。」
『ご家族によろしく伝えてね?』
樹「…母親がAと喋らせろーってうるさかった。」
『あは(笑)…今はいっちゃんが独り占めタイムだもんね?』
樹「そーだよ。さっきなっちゃんとも電話してたけど、ブチってきたもん。」
『かわいそう(笑)』
樹「…俺もAの写真載せたいなー…」
『…なかなか、ね…』
玲於さんとのCLの番組だったり、なっちゃんとの今回のこともあって、ぽつりと呟けば、案の定困らせることになってしまって。
『…ずっと一緒にいたいから、ちょっとだけ…我慢しようね?』
樹「…その時が来るまで…ね。」
合言葉のように囁き合うけれど。
本当に叶えられる日が来るのか、その日が来たら、対価として何かを失う気もして、少しだけ怖くなる。
『…いっちゃん、会いたい。』
樹「…うん。俺も。」
きっと彼女も同じように不安や恐怖を感じているようで。
泣きそうな声で会いたいと言った彼女に。
『…マースと大福も、待ってるから…』
樹「うん。」
『…早く、帰ってきてね…?』
珍しくちょっとしたワガママを言うAに。
樹「…なんかあった?」
ほんの少しの違和感を感じて、そう尋ねれば。
『何もないよ!ほら、樹さん今日は親孝行しないと!私と話してる場合じゃないでしょ?』
樹「や、でも…」
『いつも電話くれてありがとう!元気出た!私ももうちょっとだけみんなと飲んで帰るね!じゃあね!』
わざとらしく明るく振る舞って、無理矢理に切られた電話に。
いつもの夜とは違ったざわめきを感じずにはいられなかった。
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2021年5月29日 1時