いつまでも憧れの王子様 ページ2
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『ねぇ!見て!』
何やらホクホクした顔で事務所を歩いていたAを見つける。
その手には冊子が抱えられていて、俺と目が合うなり、キラキラとした瞳で駆け寄ってくる。
『これ!もらっちゃったの!メッセージ付き!』
彼女が嬉しそうに突き出した冊子は、劇団の町田さんの写真集で。
『見て!ここ!またお茶でもしようね、可愛いお姫様って!もー!まっちー、カッコよすぎる〜!!!』
メッセージを細い指で、大切になぞり、細い腕でギューッと写真集ごと抱きしめる彼女は、町田さんのメッセージにこれでもか!と言うくらいに照れながら喜んでいて、とてつもなく可愛い。
『この顔も素敵なんだけどね、スラーっとした全身が写ってるこの写真のまっちーも素敵なの!』
パラパラとページをめくりながら、Aが好きな写真の説明を受ける。
お気付きだろうか。
俺が、未だに一言も発していないくらい、マシンガントークを彼女が繰り出していることに。
『あー、やっぱりまっちー素敵だなー!ほんとカッコイイ!』
涼太「いや、お前それ彼氏に言うこととちゃうやろ(笑)」
隣を歩いていた涼太さんが、見兼ねてツッコんでも、どこ吹く風。
『えー?だって、大好きなものは共有したいんだもん!』
涼太「樹も困ってんで?(笑)」
正直、ホクホクしすぎて可愛かったので、あんまり気にならなかったですとも言えず、苦笑いしていると。
涼太「彼氏に、他の男のこと素敵だとか、カッコイイとか言うもんじゃありません。」
『いっちゃんは、また別次元で大好きだもん!ていうか、もはや愛だし!』
自信満々に涼太さんにそう言うAに、ニヤケが止まらなくなる。
涼太「…彼氏の前でそういう…可愛いこと言うのもやめなさい!樹、絶対ムッツリだから!!!」
ごめんなさい、もう手遅れです。
『まっちーはね、ずーっと、ずーっと憧れの王子様なの!』
涼太 「いや、王子は俺やろ?!」
『関西弁の王子なんて嫌だもん!スラーっとスタイル抜群で爽やかイケメン王子様はまっちーだけ!』
ギューッと抱きしめた写真集の表紙を、じっと見つめて、ふんわりと照れ笑いするAの腕を、思わず掴んでしまう。
樹「…俺は?」
『…ずーっと愛してほしい人。だから、まっちーとは違うの!』
どこかしたり顔で微笑んで、上目遣いで俺を見つめるAは、ずるい。
可愛くて、愛しくてたまらない、俺だけのお姫様だ。
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2021年5月29日 1時