Episode10.痛みの先 ページ45
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Bar ODAKE
山王街の外れにある廃ビルは、昔閉店してから手付かずのまま残されており、彼らにとっては格好の喧嘩の場所だった。
きっと、彼らは、そこで闘っている。
自分たちの信念を貫き、仲間を、この街を、守るために。
「…コブラと、何かあった？」
『…え？』
「…いい感じに見えたけど。」
『…私、ズルい女なんです。』
コブラとヤマトを追い出した後、グラスを拭きながら開店の準備を進めるママと話すのは、ここ最近のコブラとの出来事。
『…ここ最近ね、思い出すんです。しばらくぶりに、懐かしい人に会ったり、思い出の物に触れて…一気にあの人のこと、思い出して…忘れられなくて…。でも…コブラに優しく触れられると…流されそうになる…。』
そっと、ママから温かい紅茶を差し出され、受け取ったカップを両手で包み込みながら、Aは話し続けた。
『…こんなの、ズルいって…しっかり突き放さなくちゃって…思うんだけど…でも…』
「…コブラが、真っ直ぐ立っていられるのは、あんたのおかげでもあるんじゃない？」
『……』
「あの子だって、きっと、色んなもの背負って、倒れそうになりながら前に進んでる。強く、自分の信念を貫き通せているのは、Aが隣で笑ってくれてるからなんじゃない？それに、大切に想われることだって、女の幸せよ？そこに甘えたって、いいじゃない。ちっともズルくなんてないわ。」
カシャン…
ママに優しく声をかけられたとき、少し戸惑ってしまい、手が滑り、ティーカップとソーサーが小さく音を立てた。
自分を受け入れてもらえて、安堵しながらも、なんだか、嫌な予感がした。
「…A…？」
『…あ…いや…なんでも…』
自分を落ち着かせるように、再度カップを包み込み、冷えた手を温めた。
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作者名：にゃんちゅう
| 作成日時：2016年10月19日 7時
