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この時の俺たちは
それが正しいと思っていた。
拳で街を守る。
本当の痛みも知らない俺たちは
まだガキだった。
なぁ、ノボル。
お前には、俺たちがどう見えていた?
俺たちは間違ってなかった。
そう信じたい。
その痛みの先にあるものは何だ。
俺たちは、何のために
その拳を振りかざしていたのか。
この時の俺たちには
大切なことが欠けていた。
その先に何があるのか。
この痛みが、どんな結果をもたらすのか。
まだ、何も分かっていなかった。
「…ノボルは…?」
朝方になって山王街へ戻って来た面々は、乱闘の途中で見かけたフードの男=ノボルについて話し始める。
「あいつ…いつムショから出てきたんや…」
ふと視線を下したコブラの頭の中に、過去の記憶が過る。
「…あんなことは、もう繰り返さねぇ。」
先頭を歩いていたコブラは静かに言葉を発すると、片手を挙げ、1人別方向へと歩み始めた。
「え、ちょっ…コブラさん?!」
焦ったチハルが声をかけると、横からテッツが飛びついて、チハルを引き留めた。
「バカ!Aさんのとこだよ!」
Flower Shop
山王街の端に位置する、古い花屋の入り口で、軽トラックの荷台から、バケツに生けられた花々を下ろす、小さな姿を捉えた。
彼女が顔にかかった髪の毛を耳にかけると、ようやく視線が合い、こちらの存在に気付いた。
『…おかえり。』
「…おう。」
どこかホッとしたような、それでも、口元に残る傷跡を見つめて、困ったように笑って、一言呟いた彼女に歩み寄り、その小さな頭に触れると、泣き出しそうな顔でこちらを見上げてくる。
「…約束、したろ。俺は、居なくならねぇ。」
『…うん…』
あの日の私の悲しみを
あの日の私の願いを
あなたはこうして覚えていてくれる。
そして
自分の信念と共に
私の思いまでも
大切にし続けてくれるんだ。
私が
心のどこかで
未だに彼を想っていることにだって
気付きながら
受け止めてくれるんだ。
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作者名:にゃんちゅう | 作成日時:2016年10月19日 7時