Episode8.家村会 ページ38
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Flower Shop
「悪いな。あいつ、さっき帰ってきたと思ったら、急に部屋に閉じこもっちまって。」
「…いや。あんま無理しないでくださいよ。あとやっときますから。」
階下で、コブラと父親の話す声が聞こえた。
ITOKANからの帰り道でノボルを見かけたあと、どうしても何もする気になれず、腰を痛めている父親の手伝いもせずに、Aは自室へと閉じこもっていた。
用もないのに、よく我が家にやってくるコブラは、父親が腰痛持ちであることも、この店の仕事の内容も、覚えてしまっていて。
こうして、父親の手伝いをすることが度々あった。
近所に買い出しにでも来ていたのか、ナオミの声までも聞こえ、自室の窓から外を見ると、ナオミとコブラが連れ立って歩いて行く後ろ姿が見えた。
「おい、コブラの野郎、来てたぞ。」
『…うん…』
「…お前、何泣いてんだよ。」
『…なんでもない…』
ふと部屋にやってきた父親に声をかけられながらも、窓の外の景色から目を離すことができず、佇んでいた。
机の上に飾られていた多くの写真立てが伏せられていることも、窓の外の景色にも、父親は気付いている。
「…お前はずっと家にいればいい。そしたら、父ちゃんは安心なんだけどな。」
気付いているからこそ、あったかい大きな腕で抱きしめてくれるし、ふざけたような言葉で、あの人と同じように甘やかしてくれるんだ。
「…父ちゃんはずっと一緒にいるからな。危ない目になんか合わせないからな。」
そっと、頭に口付けるように囁かれる。
「…母ちゃんと約束したから…Aが、ずっと幸せに暮らせるように…父ちゃんが、守ってやるからな。」
ひとつ、立てられたままの写真立てに触れて、家族3人で店の前で笑う姿を見つめながら、そう呟いた。
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作者名：にゃんちゅう
| 作成日時：2016年10月19日 7時
