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『ねぇ、ナオミ…』
彼らが出発した後、静かになったITOKANで、コブラの残したカップを片付けながら、Aはカウンターのナオミに声をかけた。
「…どうした？暗い顔して。」
優しい笑顔でナオミは答え、静かにカウンターのスツールに腰掛けたAの隣に座った。
『…なんか、寂しいなって…。また、置いてかれるような気がして…。』
「…大丈夫。コブラはAに黙って居なくなるなんてこと、絶対にしない。今日だって、一番にあんたのところに帰ってくるよ。」
『…うん…』
Aの肩を優しく叩きながら発するナオミの言葉に、Aは視線を彷徨わせながらも、ようやく頷くと、一筋の涙を零した。
「……コブラと、何かあったの……？」
ナオミが顔を覗き込みながら、困ったような笑顔で優しく尋ねると、Aは小さな手で顔を覆い、更に涙を零し始めた。
『…違うの…ただ…最近、思い出しちゃって…』
「…うん…」
『…パパが…あの人が店に来たって、言ってて…それで…』
「…うん…」
『…会いた、いって…また店に会いに来てくれるんじゃないかって…色々…考え、たら…眠れなくって…』
「…気付いてあげられなくて、ごめん…」
ナオミが優しく肩を抱き寄せて、優しく、言葉を紡いでくれる。
『…違うの…ナオミは悪くないよ…』
「…コブラ、気付いてたんだね…」
ここ最近の、彼の、彼女に対する、甘ったるいほどの優しさを思い出し、ナオミは少し困ったように微笑んだ。
「…あの人のことは、Aのせいじゃない。あんたは、何も悪くないんだからね。」
いつまでも、忘れられない。
困った顔しながらも優しくしてくれるから
いつまでも、甘えてしまう。
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作者名：にゃんちゅう
| 作成日時：2016年10月19日 7時
