HiGH&LOW (ページ13)

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あの後、一旦は自宅に戻ったものの、急遽出かけることになったという父の都合で、その日は店を早々に閉めることとなった。
(おそらく、ヤマトの母親と連れ立ってパチンコにでも行くのだろう。)

彼のところに行かなければ、と思いながら、どう声をかけて良いのか分からず、ついつい避けてしまっているうちに、ITOKANへと辿り着き、そのまま夜まで過ごしてしまった。

「お花屋さんなんですね！だから、あの時…」
『そうそう。ちょうど配達の途中で…。山王街の端っこの方でね…お父さんと2人で細々とお花屋さんしてます。』

ITOKANで話をしていると、チハルとは自宅が同じ方面であったことが判明し、2人で帰路についた。

『…チハルくん…ちょっと、危ないかも…』

ふと、周囲に2人以外の足音があることに気付き、チハルの手を取り、小さな声で伝えた後に、走り出そうと辺りを見渡すが、すでに取り囲まれてしまっていた。
チハルはAの手を握り返し、その場を逃げようとするが、辺りを見渡しても、逃げ道は見つからなかった。

「チハル…やっと見つけたぜ。女連れちゃって、何してんだよ。」

チハルがAを庇うように鬼邪高の面々の前に立ち、この場をどう切り抜けようか思考を巡らせていると、人垣をかき分けて、1人の男が電話をしながら、すぐ横にあった自販機に向かってきた。

「うん…俺。今？山王。」

こちらの様子を気にもせず、通話をしながらも、ドリンクを購入する男。
鬼邪高の連中は、その男に腹を立てた様子で殴りかかって行くが、男は電話を持ったまま、片手で次々と相手を殴り倒していく。

『…あれ…？』

その闘う姿は、どこか見覚えがあって。
自販機の明かりに照らされて見えた顔に、Aは唖然とした。

「こいつ…雨宮兄弟の広斗…」
「伝説が…そのまま現れた…！」

冷めたような、ジロジロとこちらを見る目。
口角を片方だけ上げて、嫌味ったらしく笑う顔。
頬を撫で上げる冷たい手。
あの頃と、何も変わっていなかった。

『…雨宮、広斗…』
「…お前…琥珀と一緒じゃ…」
『…え…？』

タイミングよく、彼の携帯が鳴り出した。

「や…悪りぃ。行くわ。」
『待って！琥珀のこと…何か知ってるの？』
「…またな。」

縋るように彼の手を掴んで尋ねたが、そっと手を外され、そのまま電話を耳に当てて、歩いて行ってしまった。