metropolis ページ41
覚えてるのは、あの人の笑顔。
握りしめた手はあったかい。
手術台の上。麻酔をかけられる前に見た彼の笑顔は、最初に会った頃を思い出した。
「いってきます」
雨宮さんと二人。誰もいない部屋に向かって、いってきますを言った。
帰ってこれないかもしれない。でも、私は帰ってくる
雨宮さんと二人で。
薄れていく意識の中、思い出した記憶がすごい早さで流れていく。
雅『なぁ、お前なんでいつもここに来んの?』
『来たいから』
雅『ガキはさっさと帰れ』
『やだ』
雅『やだじゃねーよ。ガキは帰る時間なんだよ』
『だって帰る場所ないんだもん』
眠りに落ちる直前、涙が一筋流れた
ねぇ雨宮さん。
言えなかったけどね。私、あなたと初めてあったとき、
一目惚れしたんだよ。
『好き』
雅『うっせーガキ』
『だって好きなんだもん』
『大人になって、俺好みの女になったら考えてやる』
私、あなたの好みの女の子なれたかな?
どうしよう。最後なった今更、聞きたいことがたくさん。
朦朧とする意識の中、一生懸命に伝えた言葉はあなたに伝わってたかな?
声にならなかったかもしれないけど、『大好き』 って。
これが私の最後の言葉
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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作成日時:2016年11月9日 0時