目覚めた世界 ページ38
雅「Aさん！」
別途で寝ていたら、雨宮さんの声がした
この部屋を出ていこうとしたのに、気分が悪くて出ていけなかった。
‥‥雨宮さんに会いたくなかったのに。
雅「大丈夫ですか？キャレンから連絡を受けました。直ぐに病院に行きましょう」
「‥‥病院には、いかない」
雅「なぜです？辛いんでしょう」
雨宮さんが駆け寄ってくる前に、私は拒絶した。
「行っても無駄じゃないですか。‥‥どうせ私‥‥死んじゃうんですから。」
雅「A‥‥」
「嘘つき」
雨宮さんを見た
大好き
その感情しかない
あなたが好き
でも私は、もう長くない。
かつて私は、医者からそう告げられたんだ。
「すごいね。忘れたいって願ったら‥‥本当に忘れてちゃった」
雅「‥‥」
「雨宮さん‥‥雅貴‥‥」
私の脳には、腫瘍が出来ていて
それが、どんどん膨らんでいて
手術をしても、治る見込みは全然なくて
もうどうしようもなかった。
「冬も、春も、夏も、秋も‥‥一緒にいられないよ。一緒に思い出作ろうって約束したのに‥‥。」
私には、未来がなかった。医者から宣告されたとき受け入れたはずなのに。
「あなたといられない‥‥」
全部思い出してしまった。
私‥‥死ぬんだ。
「一緒にいたかったよ‥雨宮さん、私あなたが好きだった‥‥忘れてたのに、やっぱり好きになってしまいました」
雅「A」
「私、死ぬのなんて怖くなかった。怖くないって思ってたけど、怖くなった。大好きな人を残していなくなるって思ったら耐えられなくなった。」
そうして、私は「A」になった。
両親がいた頃のワガママで甘えた「A」になった
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作成日時：2016年11月9日 0時
