記憶 1 ページ36
「いってらっしゃい」
雅「いってきます」
朝、会社に行く雨宮さんに鞄を手渡す
高校を卒業して、大学に行って…苦難もあったけど、雨宮さんはちゃんとした会社に就職した。
記憶はないけど、あんな環境から死に物狂いで頑張ったんだと思う。
並大抵の努力でできることじゃない。
それはAのために…私のために
初めてあった記憶は思い出したけど、それっきり新しい記憶は思い出せていない。
お互い、「A」と「雨宮さん」の関係が長かったせいか、いつもみたいな口調に戻ってしまう。
雅「会社ではこんな感じですよ」
って雨宮さんは笑ってたけど。
早く思い出して、完全にあなたを解放してあげたい。
松「幸せそーね〜」
「ひゃっ!」
地を這うような声にびっくりする
朝から不吉すぎる。怨霊かと思ったらキャレンだった。
「あ、おはようキャレン」
松「おはようじゃないわよ!泥棒猫」
なんでまだ泥棒猫呼ばわり?
「ちょ、キャレン!雨宮さんのこと認めてくれたんじゃないの?」
松「認めてるわよ〜!頭では思ってるけど、乙女心はそうじゃないのよッッ!!大樹なんか落ち込んじゃって部屋から出てこないのよ!大学も休んでるみたいだし」
そんなの私のせいじゃない。
松「で、どうなったのよ」
「どうなったって?」
松「昨日のことよ!!」
「えっと…雨宮さんと出会ったときの記憶が戻って、やっぱり私は雨宮さんが好きですって思って」
松「それで?」
「おしまい」
松「フザケンナゴラァ!」
さっきまでの乙女っぽい声がオッサンになった
「だってそれだけなんだもん」
松「もっとこうっ!大人の恋ってもんがあるでしょうがぁぁ〜」
「大人の恋ってなに?」
松「そんなの私の口から言えるわけないでしょおぉ!」
言えないなら私だって分からない。理不尽すぎる
松「…あんたって、記憶が戻ってよ変わらないのね」
「戻ったってすべての記憶が戻った訳じゃないのよ」
松「同じことよ。一番初めの記憶。これが大事なのよ。」
一番初め‥‥?
松「出会った頃の記憶、思い出したんでしょ?一番大切よ」
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作成日時:2016年11月9日 0時