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——ティナリがここ、ガンダルヴァ村に来る前。
今でこそしっかりとした規律を持つレンジャー隊も、前まではとても非効率的で非合理的で、統率なども無かったと思う。その際の癖と言うものは厄介で、ずっと「他人に迷惑はかけられない」と、ある種の完璧を求めていた。
功を奏した、と言えば良いのだろうか。おかげでみんなから「頼めば解決してくれる」「困りごとはAに言えば大丈夫」などと言われるようになった。それは良い、役に立てるのは嬉しいから。ティナリがいる今もそれはかわらない。でも、どうも少し重荷になっているらしい。
「Aは当分お休みかな。その怪我が治るまでゆっくりしてて。」
「え!?このくらい大丈夫…あっ、う…ティナリ、痣押すのやめて……」
「君の言う大丈夫が大丈夫じゃないことくらい僕には分かるし、他のみんなだっていつも頑張ってる君が休んだって何も言わないよ。それと、その神の目に頼る治癒は禁止。自然治癒だからね。」
じわりじわりと痛む怪我と、レンジャー長ティナリからの通達に眉を顰めているとベッドが軋む。
「それから、誰が入ってくるかもわからない部屋でそんな格好しないこと。次に僕が入った時にそんな肌けた格好してたら——
「ひ、ぇ…な、なんで…」
離れるついでに肌が隠れるよう上着を私に羽織らせたティナリは混乱した私の問いに笑顔を浮かべ、理由か…と離した距離をまた縮めてきた。そのまま鼻と鼻がそっと触れ合う。
一気に上がる体温と心拍数に驚いていると数センチの距離を保ったまま離れていくティナリ。
「理由はふたつある。ひとつはレンジャー長として、仲間のことを気にかけるのも心配するのも当然だよ。ふたつめは……言わないと分からない?」
「は、あ、え……や、良い、言わなくて…」
「そう?」
それは残念、とあまり残念そうには見えない表情のまま台詞を呟き部屋を出て行こうとするティナリは思い出したかのように振り返った。
「少なくとも、僕は君が思っている以上に君を大切に思っているよ。だからもう少し自分の体を大事にしてほしい。」
それじゃあおやすみ、と今度こそ出て行ったのを確認して服の裾に腕を通す。そのままベッドに倒れ込んで私は大きく深呼吸をした。
——(あんな、あんな真っ直ぐ伝えられると…恥ずかしいな……)
——(ふぅ……少し…いや、大分我慢したな…とにかくあんな格好他の人に見られないようにしないと。)
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はくあ - アッアルベドお兄ちゃん...リクエストいいですか... (2023年2月1日 20時) (レス) @page27 id: 3df7a9e742 (このIDを非表示/違反報告)
せぱらんとすぱごん(プロフ) - リクエスト応えてくださり本当にありがとうございます…!!通知来た瞬間嬉しくなりましたwまんまアルハイゼンでほんと…すごいです…() (2023年1月27日 15時) (レス) @page18 id: e5b6d94770 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 遅くなってすみません!リクエスト応えてくれてありがとうございます!凄いです… (2022年9月21日 16時) (レス) @page8 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
ねこねこみこみこ - ぬわぁぁぁぁぁ!!なんなんだこの作者様の最高なティナリは!?私はこれと同じ、、いやッッこれ以上なティナリを見たことが無いッッッッ!作者様!最高ですぞ!! (2022年9月14日 18時) (レス) @page5 id: 615e2dc66e (このIDを非表示/違反報告)
ちゅん - コメント失礼します。ティナリ様作者様様です、、、しっかり意識させる男(?)で笑ってしまいました最高です!!!!アルハイゼン楽しみですぐふふ🤤 (2022年9月8日 0時) (レス) @page5 id: 079c11adfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりふき | 作成日時:2022年8月27日 18時