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蝋燭の灯りをぼんやり眺めていると綾人さんは言う。



「ここは確かに人は来ませんが、流賊などがこのようなところへは来たりは?」

「来ません…いえ、来させません(・・・・・・)。」



誰にも会わなかったでしょう?と聞くと綾人さんは何も言わずにただ頷いた。


そこらにいる浪人も、ヒルチャールも、ここだけは侵させるわけには行かない。だってここは、今の行動範囲内で唯一の憩いの場なのだから。



「…もし彼らを退ける力があなたにあるのなら、あの家から逃げる事は容易いのでは?」

家族(・・)とか家柄(・・)とか、その場に縛られるには十分な理由でしょう…あんな人でも、ただ1人の家族だから。」



優しい父を知っている——幼い頃の記憶が苦しくなるほど私に染み付いている。あの優しさと今の恐怖と、きっとどちらを取ってもあそこから逃げ出すことは出来ない。



「まぁでも…逃げ出せるようになっても当分はここに居ますよ。」

「おや、それはなぜです?」



彼から目を逸らし、一度口をつぐむ。緩く弧を描く彼の口元を視界に入らないようにして席を立って、膝に置いたままの本を棚へ戻して顔を上げた。




「この時間は、気に入ってます…少なくともあなたが来る日が待ち遠しいと思ってしまうくらいには。」



声を落としたって、静かなこの場では意味がない。妙に響いた言葉に羞恥心が襲って服を握る手に力が篭った。


こんなことを言えばきっと彼を困らせてしまうのはわかっているはずなのに。私は返事をしない彼の顔を見ないまま、家へ帰るために入り口へと向かった。



「…失礼。今のは…忘れてもらって構いません。それでは私はこれで。」



逃げるように駆け足でその場を立ち去る。



——もちろん、緩みきった顔を隠す彼のことなど知る由もなかった。

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こて - コメント失礼します〜!!!リクエストの件なのですが、八重神子をお願いしても宜しいでしょうか!あなた様の作品をいつも楽しく読ませていただいております🙏🙏 (2022年8月27日 10時) (レス) id: 903d9d5d23 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。もし宜しければリクエストでティナリで出来ますでしょうか?これからも体にお気を付けください。 (2022年8月27日 0時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - コメント失礼します!平蔵くんでリクエストしてもよろしいでしょうか?無理そうでしたら大丈夫です!いつも楽しく読ませてもらっています!体調にお気をつけください! (2022年7月31日 18時) (レス) @page37 id: f124848c25 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP1〜104話【守るべき人】」の森羅万象支配か「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP3〜171話【赫の暴帝】」のネルみたいに倒してみた、どちらか書きやすい方で大丈夫です。お願いします (2022年7月20日 0時) (レス) id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - リクエスト失礼しますクロスオーバーって大丈夫ですか?大丈夫ならパトパトチャンネル様とのクロスオーバーみたいです。「彼を圧倒していた悪信教を圧倒したら」で、ガイア、綾人、しょう、誰かお願いします参考動画は次に書きます! (2022年7月20日 0時) (レス) @page9 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりふき | 作成日時:2022年6月8日 21時

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