おはよう幻想世界【gnsn】

◇アルベド / 等価交換 ページ38

等しい価値のものを

—————

「A、おいで。」



アルベドに呼ばれて顔を上げると、彼はなぜかマフラーを広げるように持っていた。ドラゴンスパインにあるこの拠点はたしかに寒いのかもしれない。けど——



「…アルベド、私は寒くありませんよ。」

「確かにそうだね。けど見た目は大事だろう？」



アルベドだって寒そうです、と以前もらって着ているコートを見ながら考えているとついに彼から歩み寄って来て首にマフラーを巻かれる。


それを見て満足そうに頷くと私の頭を撫でて、彼は研究に戻っていった。




「あれ、Aさん…一段と暖かそうな見た目になりましたね。」

「私は「暑い」も「寒い」も少ししか分からないので、こんなに防寒着は必要無いのですが…」

「でもよく似合ってますよ。」



流石はアルベド先生です、と笑うスクロースは私が言わなくとも彼からの贈り物だと理解している。と言うのも、こんなやりとりは定期的に行われるから。


自分の今の格好を見て首を傾げていてふと思う。私はアルベドからもらってばかりだ、と。アルベドは何かほしいものとか、してほしいこととかないのだろうか、と立ち上がると少し目眩がしてふらついてしまう。



「Aさん！だ、大丈夫ですか？」

「ありがとうございますスクロース…すぐ、良くなりますから。」




——段々と、動ける時間が短くなって来ている。


コートの中に隠れていた鍵を手にアルベドが実験を始める前にと声をかけに行く。そんな私の様子を見た彼は少し目を伏せていた。



「少し早いね……大丈夫、ボクが何とかする。もうすぐなんだ。」

「……はい。」



アルベドから貰ったマフラーもコートも脱いで、うなじが見えるよう髪をかき分け背中を向けるとひんやりとしたものが入ってくるのを感じた。カチカチと自身の中が動くのを感じる。



「ん……もう大丈夫です、ありがとうございました…アルベド？」



私の鍵を持ったまま動かなくなってしまったアルベドに手を伸ばすと、彼は私の手をぎゅっと握りしめた。

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