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鳴神大社に戻る頃には、雨は随分と弱まって来ていた。床が濡れないよう傘を閉じて、中へ入って行く。途中出会う巫女たちは私の姿を確認するなり頭を下げてくるが、宮司でもない私にそこまでしなくて良いと言っても聞いてもらえない。
皆口々に「将軍様と宮司様のご友人であり、長く稲妻を見守ってくださっているゆえ」などと言う。
それを知っているのは一部の人間だけで、きっと知らない人が見たら首を傾げるだろう。
「おかえりなさい、A。」
「影?ただいま、来てたんですね。」
雷電将軍もとい雷電影。紛れもなく私の友人で、もう長い長い付き合いになる。ここ鳴神大社の宮司、八重神子もそうだ。
影が一心浄土から出て来てくれるようになって時間が経った。「鎖国」も「目狩り令」も撤廃され、ずっと暗闇から抜け出せないでいた稲妻もようやく前に進み出している。まだまだ不安定な時期は続くだろうけど。
「読書?」
「はい、神子に…借りたものです。」
そう言って表紙を見せてくれた影に私は苦笑いを溢す。神子が編集長を務める八重堂で1位2位を争うほど人気の娯楽小説だ、少しは面白いと言っていたのを覚えている。
「今の本は慣れましたか?突飛な物語が多いけれど。」
「えぇ、少しずつではありますが…最近は面白く思えて来ました。」
「それは良かった。」
買ってきたものを抱え直し、台所へ向かおうとすると影も本を置いて慌てたように後をついてくる。
「公務を頑張る妾のために優しいAはそれはもう美味な油揚げを作ってくれるのじゃろう?」——そう言って仕事をしに行った神子を思い出しながら材料を取り出し調理を開始する。影はそんな私の手元を覗きこんだ。
「影、包丁を取ってください。」
「こ、これですね…」
「…薙刀も刀も扱えるのに、なぜ包丁に対しそこまで緊張するんです?」
「緊張などしていません…!」
そう言うことにしておきましょう、と包丁を受け取る。
「油揚げが出来たら、団子を作りましょうか。影も手伝ってくださいね、丸く形作るだけですし…コツも教えますから。」
「……やってみます…ちゃんと見ていてくださいね…?」
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こて - コメント失礼します〜!!!リクエストの件なのですが、八重神子をお願いしても宜しいでしょうか!あなた様の作品をいつも楽しく読ませていただいております🙏🙏 (2022年8月27日 10時) (レス) id: 903d9d5d23 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。もし宜しければリクエストでティナリで出来ますでしょうか?これからも体にお気を付けください。 (2022年8月27日 0時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - コメント失礼します!平蔵くんでリクエストしてもよろしいでしょうか?無理そうでしたら大丈夫です!いつも楽しく読ませてもらっています!体調にお気をつけください! (2022年7月31日 18時) (レス) @page37 id: f124848c25 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP1〜104話【守るべき人】」の森羅万象支配か「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP3〜171話【赫の暴帝】」のネルみたいに倒してみた、どちらか書きやすい方で大丈夫です。お願いします (2022年7月20日 0時) (レス) id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - リクエスト失礼しますクロスオーバーって大丈夫ですか?大丈夫ならパトパトチャンネル様とのクロスオーバーみたいです。「彼を圧倒していた悪信教を圧倒したら」で、ガイア、綾人、しょう、誰かお願いします参考動画は次に書きます! (2022年7月20日 0時) (レス) @page9 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりふき | 作成日時:2022年6月8日 21時