おはよう幻想世界【gnsn】

ページ ページ29

星に願うは、決して叶わない小さな願い。まるで子供のような願い事でも、星を見上げない日はなかった。たとえ空が雲に覆われていたって雨が降っていたって、昔から夜になると空を見上げないと気が済まなくなっていた。



「願い事、でござるか。」

「そう。ずっと大切な人と居られますように…って、お願いするの——私たちに「永遠」はないのに。」



悲観して居るわけではない。私が稲妻で過ごした時間は長い、もちろん雷電将軍が掲げるものが「永遠」なのも知っている…というか誰もが知っているだろう。それでも私には「永遠」と言うものが理解できなかった。


それだけは、どうしても良い形で心の中に落とすことが出来ない。今の時間を目一杯に過ごすことしか出来ないのだから、余計に分からない。




夢に見る。鮮明でなくとも、友の刀が地面に落ちたあの音を。




「置いていかれるの、本当は凄く嫌なの。だから——」

「心配せずとも、拙者がAを置いていくことは無い。ほら…手を握って、目を閉じて、拙者に身を委ねるでござる。」



あくまでも私から自主的に動くように、私の手を掬い取って乗せただけの万葉。少し迷った末にぎゅうっと握りしめて、彼に寄りかかると毛布に包まれ片腕で抱きしめられた。



「…あったかい……」

「はは、まるで幼子のようでござるな…拙者がそばに居るゆえ、今日は安心して眠ると良い。」



子供あつかいするなの意を込めて背中を叩く。


それでも言われた通りに目を瞑って、それからゆっくりと呼吸を続けていれば強い眠気が襲って来る。うつらうつらしながら閉じそうな瞼を上げていると、頭を撫でられて今度こそ瞼が完全に落ちきってしまった。


あぁ、眠るのが怖いはずなのに、万葉の腕の中はこんなに——





——(……ようやく、眠ったみたいでござるな…姉君に報告…は、明日でも良かろう。離れている間に、Aが起きてしまったら怒られてしまうからな。)

次ページ→←◇楓原万葉 / 星に願いを

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す