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一通り怪我まで見てくれた綾人さんは、そのまま洞窟内の掃除まで手伝ってくれていた。
「…これは……」
「ん…あぁ…この近くに咲いている花で作った冠だったものです。」
綾人さんが大事そうに手にしたのは、枯れかけだった挙句刀で斬りつけられほとんど形を成してない花の冠だった。それを見つめる瞳が少し揺れている。
声をかけるのを躊躇っていると、彼は崩れた冠をそっと置いて片付けを再開した。
しばらく、お互い無言でいるとすぐに片付けは終わり一息つくことが出来た。飲み物をいれたいけど、あいにく湯呑みも壊れてしまっている。またこっそり家から拝借しないと…
「Aさん、あの花の冠の作り方を教えていただけませんか?」
「え?えぇ、それは構いませんが…」
「ありがとうございます。では、今から花を摘んで木漏茶屋へ行きましょうか。」
「…はい?待ってください、私は誰に教えるんですか?」
「私の妹、綾華にです。」
ちゃんと話を聞いてから了承したら良かったと今になって思う、思わずため息をついてしまった。綾人さんの口ぶり的に、私が断らないことを見越してこんな言い方をしたのだろう。
行きましょうか、と私の手を引く綾人さん。後を追うように花が咲く場所までやってきた。
「…なぜここまでするのですか?」
「なぜ、とは?」
「あなたとしても社奉行としても、一個人を助けることに利益はないでしょう。」
ずっと疑問に思っていたことを花を摘みながら聞くと、彼はしばらく黙り込みそれから顔を上げて私をじっと見つめた。
「社奉行として、となると…確かに大きな利益はないでしょう。ですが…私個人としてはそうではありません。」
「……つまり?」
「私はあなたを手放したくないんですよ、Aさん。あなたを傷つけるあの家から攫うことができるなら、攫ってしまいたい。」
思わず手を止めて、綾人さんの方をじっと見つめてしまう。当たり障りない様子で照れる仕草もなく、ただ私と同じように花を摘んでいる。
そんな言葉を女である私に吐いて、そんなの、まるで——
「っ…花は、このくらいでいいでしょう。」
「そうですか?」
この人は、一体私をどうしたいの?
——(心臓が痛い、顔が熱い、本当になんなの…?)
——(この調子なら、外堀は軽く埋める程度で大丈夫でしょう…ふふ、それにしても随分可愛らしいお顔をする。)
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こて - コメント失礼します〜!!!リクエストの件なのですが、八重神子をお願いしても宜しいでしょうか!あなた様の作品をいつも楽しく読ませていただいております🙏🙏 (2022年8月27日 10時) (レス) id: 903d9d5d23 (このIDを非表示/違反報告)
名無し3680号(プロフ) - コメント失礼します。いつも楽しく読ませていただいています。もし宜しければリクエストでティナリで出来ますでしょうか?これからも体にお気を付けください。 (2022年8月27日 0時) (レス) id: be46167942 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - コメント失礼します!平蔵くんでリクエストしてもよろしいでしょうか?無理そうでしたら大丈夫です!いつも楽しく読ませてもらっています!体調にお気をつけください! (2022年7月31日 18時) (レス) @page37 id: f124848c25 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - 「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP1〜104話【守るべき人】」の森羅万象支配か「専属神篇第三幕〜東京異変〜EP3〜171話【赫の暴帝】」のネルみたいに倒してみた、どちらか書きやすい方で大丈夫です。お願いします (2022年7月20日 0時) (レス) id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
こころ - リクエスト失礼しますクロスオーバーって大丈夫ですか?大丈夫ならパトパトチャンネル様とのクロスオーバーみたいです。「彼を圧倒していた悪信教を圧倒したら」で、ガイア、綾人、しょう、誰かお願いします参考動画は次に書きます! (2022年7月20日 0時) (レス) @page9 id: fa05d75225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりふき | 作成日時:2022年6月8日 21時