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鍾離様が購入したのは一冊のノートだった。いわゆるアンティーク調、特注らしく受け取る時の支払額は中々のもの。それと、ノートに合うようなペンまでもらってしまった。
「旅をして見てきたものを、それに書き記すと良い。」
「……ありがとう、ございます…」
まさかこんな立派なノートをもらえるとは思ってなくて、表紙をしばらく見つめてからぎゅっと腕の中に抱えると鍾離様はまた私の頭を撫でてくれた。
こういう贈り物ははじめてだった。かなり贔屓してもらっている自覚はあるけど、帝君と共にいた時間で多くのもらっていた物はあくまで必需品。それから戦うための武器くらいで。
ふと道行く人々に視線を向ける。
「あの時は想像も出来なかったな…」
様々な感情は私に伝わって、溶け込んでいく。喜怒哀楽、畏怖、虚無感など…あらゆる感情の受け皿になるのが私。あまりにマイナスな面が酷いようなら様子を見に行くこともあった。
私の行動が必ずしも誰かを救うわけではない、無意味のまま終わってしまうこともある。たとえば——夜叉、とか。
魔神戦争最中は特に、受け取る私でさえ恐怖と不安に駆られ涙が止まらない日があった。終結後だって、すぐにそれらが収まるわけではない。
今はそれが嘘のように穏やかだ。テイワット大陸最大の貿易港であるここは、色々な思いが行き交ってはいるけど…
「鍾離様、夜になったらまた会いに来ます。お話する内容もまとめたいので…」
「あぁ、それまで自由に過ごすといい。今の璃月をひとりで見に行くのも悪くないと思うぞ。」
「鍾離」としてここに立っている帝君も、いくらか柔らかい考えを持つようになったと思う。感情も刺々しさはあまり感じられない。
もう少し一緒にいたい気持ちもあるけど、現状の整理…と言うか私の方で気持ちの整理をして頭の中をさっぱりさせたい。
ノートは…うん、奥蔵山に行って書こう。
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匿名 - 感動できる物語を読まさせていただきありがとうございます！！これからも応援しています！ (2022年6月14日 21時) (
レス) @page15 id: e82571c646 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 続編おめでとうございます！最初から読ませて頂きました！更新頑張ってください！応援してます！ (2022年6月3日 22時) (レス) @page4 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりふき | 作成日時：2022年6月1日 19時
