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鍾離様は、岩王帝君——岩神モラクス。それは記憶が戻る前からなんとなく気付いていたし、記憶が戻ってからは確信に変わっていた。


時の流れ、摩耗、神であるがゆえの葛藤…時代は変わっていく。神でさえ置き去りにするほど「人」の成長は早いのかもしれない。


私は比較的凡人と関わる時間が長かったことと、そもそも記憶を無くしている間は「凡人」になっていたから変化に対しては落とし込むことが容易で…けど仙人はそうじゃないから、もし何かあるなら話を聞いておきたい。



「摩耗」、と言うのも…過去ほど感じることはない。別の世界とは言え「凡人」になった十数年、それが想像以上にいい時間だったんだと思う。いい時間ではあったけど…あまりいい気分はしなかった時間。



「A。」

「…?」



ふいに名前を呼ばれて、帝君の元まで歩いて行くと突然頭を撫でられた。



「帝君…?」

「今日はもう休むといい、他の仙人に呼ばれているだろうしな。」

「…はい……あの…帝君…ほんの少しでいい、から…」




両手を広げて、帝君を見上げる。


しばらく無言で見つめ合うと、帝君は困ったように、それでもゆっくりと距離を詰めて抱きしめてくれた。不思議と疲れていても私へ伝わってくるものは感じ取ることができる。



「明日、また俺の元に来い。」

「……いいのですか?」

「お前は今回の件で役目を果たした…俺が神の心を手放し、神の座を降りた瞬間も見届けた。何より——お前は俺の愛子(いとしご)だ。」



愛子、と言う言葉に周りが…主に空とパイモンがざわつく。



「帝君が望むなら、いつまでもそばにいます。」



あまり長時間はこうしていられないから仕方なく早めに離れると、帝君からわずかに「名残惜しさ」が伝わってくる。だから手をぎゅっと握って、それから他の人に向き直る。


抱き合ったあとで、少し恥ずかしいけど…



「空、パイモン、また明日。それから……タルタリヤ、落ち着いて、時間が空いたら私のこと呼んで。」




「淑女」には軽く会釈をして、北国銀行を後にする。


この後、絶雲の間まで飛んで挨拶に回るたび毎回お小言をもらってしまったのは言うまでもない。

15『少女は出発地点へ向かう』→←〃



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匿名 - 感動できる物語を読まさせていただきありがとうございます!!これからも応援しています! (2022年6月14日 21時) (レス) @page15 id: e82571c646 (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 続編おめでとうございます!最初から読ませて頂きました!更新頑張ってください!応援してます! (2022年6月3日 22時) (レス) @page4 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりふき | 作成日時:2022年6月1日 19時

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