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長く感じた休日を終えて、部活もいつも通り男子側を中心としたものに戻って行った。Aは曇り空を見上げ、ため息をつく。雨が降らないといいけど——そう考えながら部室へ歩みを進めると、ジャージに着替え終わった石田が出てくるのが見えた。
銀、と名前を呼ぶと入っても大丈夫だとドアを開けてくれたためお礼を言って中に入り着替え中のプレートをドアノブに引っ掛ける。が、Aは櫛を取り出そうとして鞄を開けると宿題に使うノートを教室に忘れてしまったことに気がついた。着替える前に取りに戻ろうと、また外へ出る。
「あ、オサムちゃん」
「？ 着替えもせずどないした」
「ちょっと忘れ物したから教室戻ります」
「あぁ、ならついでやし白石に会ったら“早く来い”言うといてな」
会えたらでええよ、と手を振って見送る渡邊に手を振り返しAは校舎へと戻るべく歩き出す。白石のことだ、放課後なら新聞部の原稿を書いているかはたまた女の子から呼び出されているかのどちらかだろう。そんなことを考えるAは、後者のことを考えるのがあまり好きでは無い。
何かが喉奥につっかえる感覚。放課後呼び出される白石を見て何度かそんなことがあったが、Aは鈍感じゃない。なぜそう感じてしまうのかを理解していた。ハッキリそうと答えを出さないままでここしばらく居たが、あの練習試合の日を境に何となく気持ちが膨らむのを感じている。
今が楽しいのは白石のおかげだと、声をかけてもらえたのが嬉しいと、いざ口にしてしまったら全て溢れそうだった。
「——何…？」
教室の手前で足を止め、机が床を擦れる不快音に眉を顰める。開いたままのドアから顔を覗かせて、Aは思わず目を見開いてしまった。
「あ…A、さん……」
「っA、いや、あのこれは…！」
———まるで白石があの子に迫ってるみたいな
机に手をつく白石、その間に居る女子は白石の腕を掴んだままAのことをばつが悪そうに見つめていた。見たことがある、そう確か——テニス部に居た子。別クラスだが何度か話したこともある。
中へ入り2人に近づけばようやくその距離は離れて行った。
「そこ、邪魔なんだけど」
「あ、あぁごめんな…？」
机の中から宿題に使う大切なノートを取り出して、教室を出ようとしたAは振り返り笑顔を浮かべた。
「白石、オサムちゃんが早く来いって。あと——“そういうこと”は、人が来なさそうなとこでやりなよ」
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作者名：きりふき | 作成日時：2022年2月22日 2時
