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部活に入ってしまうと毎日が慌ただしくなったような、転校以前と同じとまでは行かないもののそれなりに充実した日々が待っていた。何よりも、部活での後輩たちに廊下で挨拶されるようになったことが大きく、それによって徐々にではあるがAの冷たい印象が払拭されていった。おかげでクラスメイトとも話すことがぱつぱつと増えている。
特に女子テニス部の人から声をかけられることが多い。男子テニス部の方で、後輩にアドバイスをしたりレギュラー陣と打ち合いをしている姿を見られているらしかった。女子の方にも来て欲しい、と言われたAは二つ返事で了承したため、テニス部に顔を出す際には男女共に行くようになった。
四天は元々文化部と運動部、両方に所属しなければならない。膝の故障もあり文芸部にだけ入部していたが、今や文芸部に居る時間はぐっと減ってしまった。
「う〜〜〜ん……」
「何やねんそんな…あぁ、Aか！えらい人気者になったもんなぁ」
「ええことやと思うんやけどな…？」
元々聞き上手なのだろう。机を並べて他の女子2人と一緒にご飯を食べているAはやはりあまり自分から話したりはせず、基本的に相槌をうっているだけらしい。それでもあの2人は楽しそうだから良いのかもしれない。
「なんや白石、ヤキモチか？」
「は？」
「気付いとらんかったんかいな……」
謙也の言葉はストンと良いところに落ちたように思う。白石は意識していなかったものの、やはりモヤモヤした気持ちがどこかにあった。
テニスが好きだと言うのを初めて知ったのだって、それで部活に誘ったのも白石だ。それに彼は部活内でも一番とまでは自信がないから言えないがそれでもかなり仲がいい方だと自負している。同性の方が仲が良くなるのは当たり前だし楽しいだろうが、それでも落ち着かない気持ちになったのは確かだ。
———イチバン仲良いんは、金ちゃんか財前やろか
「お、A！どないしたん」
「いや、なんか……白石が変な顔してたから悩み事かなって」
「えっ、俺のためにこっち来たん？」
「あんな〜白石が、むぐ！？」
「お、おおきにな、A！くだらんことやし大丈夫やから！」
少し首を傾げたAだったが、ドア付近にいる女子に声をかけられると「何もないなら良かった」と残してその場を去って行った。
「何すんねん！というか、そんな気になるんやったら狙えや。チャンスはありそうやし猛アタックしろっちゅー話や！」
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作者名：きりふき | 作成日時：2022年2月22日 2時
