とけて、おちて【テニプリ】 (ページ33)

今日:15 hit、昨日:16 hit、合計:27,467 hit

〃ページ33

どれくらい経っただろうか。ようやく最後まで聴き終わったAはくたびれているかと思えば案外元気そうだった。みんな個性的だったな——とテーブルの上に並べられたCDのジャケットを見つめながら腕を組むAをモニター前の4人は見守る。

案外すぐ決まったらしくCDを手に取り、扉付近の小さなテーブルに置いたA。一部始終を見ていた真田は頭を抱え、丸井は苦笑いをし、仁王は面白そうに笑いながらカメラを切る。幸村は天を仰いだのち立ち上がり彼女を迎えに行くべく歩き出した。

Aはと言うと、扉が開き安堵したものの続く廊下にまた不安気な表情を浮かべていた。しかし奥から歩いてくる幸村を見つけ一気に明るくなる。

「幸村く、ん……？」

「A」

早足で歩いてきた幸村はそっと彼女の肩を押して部屋へ戻し、自身も部屋に入っていく。何がなんだかわからないAはまたもや不安気な表情を浮かべた。

「どうして白石を選んだのかな」

「え？え、っと……き、聴きやすかったから…？」

「俺のは聴きやすくなかった？」

「と、とても聴きやすかったです……」

幸村は自分が選ばれなかったことがやはり不服だったらしい。扉を後ろ手で閉めAへと詰め寄ると、テーブルへ手を付き逃げられなくすれば彼女は息を呑み幸村を見つめる。

「じゃあ、どうして？」

「…お、大人の味ってどんなかなって…白石くんと同じこと考えたから、です……」

恥ずかしげに顔を逸らしたA、頬を掴んで元に戻してやると一気に顔を赤くする。親指で唇をなぞる幸村は鼻先がつくくらいの距離まで近付くと目を細めた。

「曲的には……やっぱりキスとかかな。試してみるかい？」

「は、ぇ……？」

「ほら目閉じて———そう、良い子」

幸村に言われると反射的に目に閉じてしまう。数秒もしないうちにお互いの唇が触れた。

結果、味とかそう言うのが分かったかと言うとひどく緊張していたAは全く分からなかった。ゆっくり目を開けると視界いっぱいに広がる幸村の顔、ぼんやり眺めているとまた軽く口を付けられたかと思えば、今度は舌でAの唇をなぞる。

「ごちそうさまでした。もう一回する？」

「！…！！……」

「ふふ、ごめんごめん。冗談だよ、ゆっくり慣れていこうね」

ゆっくり慣れていこう、距離を詰めようと彼は言うけれど、突然驚くほど接近してくる幸村にAは心臓が持つだろうか——と繋がれた手を見ながらため息をついた。