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粗熱を取るために置いてあるパウンドケーキ、そして焼けたてのココアクッキー。美味しそうに焼けたが時間がかなり迫っていたため味見をする間もなく、急いでラッピングを施しそのまま家を出る。走って約束の場所まで行くと、部活終わりの幸村の姿が見えた。



「ご、ごめ、おまたせ…!」

「今来たところだから安心してくれ。それより……少し息を整えた方がいいね、大丈夫?」



約束を取り付けたのはこちらだから余計に待たせるわけにいかないと思い走ったが、心配されてしまったことにAはもう少し早く作り始めたら良かった、と午前中のロスタイムを思い返す。


呼吸も落ち着き、ようやくまともに話せるようになるとAは持ってきたお菓子を幸村に手渡した。



「これは……」

「柳くんから今日が誕生日だって聞いたから…口に合うか分からないんだけど、良かったら」

「良いのかい…?」

「良いんだよ。誕生日おめでとう、幸村くん」



シンプルな紙袋の中のかわいらしくラッピングの袋を取り出し、じっと見つめる幸村。しばらくするとまた戻して口元を隠してしまった。



「どうしたの?」

「いやっ、すまない…今日会えた事がすごく嬉しかったのに、手作りのお菓子まで貰えると思わなくて……」

「そ、そんなに喜ぶ…?」



そう聞かれこくりと首を縦に振った幸村の表情は隠されていて分かりづらいが、緩み切っているようだった。Aからの突然のメッセージはなぜかパウンドケーキは好きか、と言う質問で、もしかしてくれるのかな?と考えてはいたがまさか手作りを貰えるとは思っていなかったようだ。


心の準備はしていたつもりだが、いざ貰えるとやはり動揺してしまったらしい。



「その、一つお願いしても良いかな。ほら、誕生日だし」

「え?あ……出来る範囲でなら」

「……君のことを名前で呼びたいんだけど、駄目かい?」



ちゃっかりしている幸村の名前で呼びたいと言う願いに、それくらいならと快く頷いた。笑みを浮かべ、また紙袋へ視線をやってからAへ戻すと幸村は気持ち弾んだ声音で口を開く。



「プレゼントも、俺の願い事も……聞いてくれてありがとう、A」

「………うん」




むず痒い気がしたAは、うまく目を合わせることができなかった。

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かな(プロフ) - とても面白かったです!!ありがとうございます‼︎ (2023年3月2日 11時) (レス) id: a32747b1ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きりふき | 作成日時:2022年1月28日 12時

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