とけて、おちて【テニプリ】 (ページ24)

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「すみませんでした……っ！！」

「え、う、うん…？」

困惑するAを他所に目の前の男子生徒、もといAに手を上げてしまった彼は突然美術室へ来たかと思えば体を綺麗に90度曲げ謝罪を述べた。おまけに「もう関わらないから！」と吐き捨て逃げるように走り去っていく。

虚しく宙に浮くAの手。そんな彼女の背後から様子を見ていた美術部の部員は何事かと彼が走って行った方を覗いた。

「そのほっぺの？」

「うん、そうなんだけど…」

「先生にめちゃくちゃ怒られたんじゃない？それか風紀委員長のさ……」

怖いよねあの人、と顔を見合わせて苦笑している女子部員に顔は確かに怖いかもな真田くん——と内心思いながらもAは手を叩く。時間だから片付けるように声をかけるとそれぞれが片付けに入る。

片付けついでに部長と足りなくなる絵の具等の画材を確認していると、想像以上に帰る時間が押してしまっていた。

「部長、今日早めに帰らないとって言ってたけど大丈夫？」

「大丈夫ではないかな！」

「鍵は私返しとくから先帰って大丈夫だよ」

「ごめんね〜！助かる、ありがとうAちゃん」

慌ただしく走って行った部長を見送り、Aも美術室の戸締りをしてから職員室へと鍵を返しに行った。先生から今日のことを心配する声がちらほら聞こえたがもう心配は無いと思うと伝え、早足でその場を後にする。

今日の夕飯、どうしようかな。そんなことを考え冷蔵庫の中を思い出しながら靴を履き替え駆け足で校門まで行くと、なぜか幸村が待っていた。

「やぁ、お疲れ様」

「お疲れ様、どうかした？」

「帰ろうとしたら丁度美術部の部長さんと会ってね、Aさんがもう少しで出てくるからよろしくって」

「…じゃあ一緒に帰ろっか」

「あ、方向一緒？」と幸村の方を見たAは、なぜか黙り込んでしまった幸村に首を傾げる。何かおかしなことを言っただろうか、と疑問に思って居ると我に返ったのか珍しく慌てた様子でいた。Aが一緒に帰るのを提案したことに大分驚いたらしい。

Aとしては折角待っていてくれていたのに断るわけにもいかないと思っていたからで、特に深い理由は無かった。が、幸村にそんな反応をされると意識してしまう。暗くなるから、と先に歩き出すと幸村も隣までやって来た。

「誰もいないね」

「……手繋ぐのはナシだよ」

指先がいたずらに触れ合うのを避けるべく、Aは手を後ろに回した。