とけて、おちて【テニプリ】 (ページ18)

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気まずさを残しながらの昼食を終え、Aと幸村は美術館へと来ていた。チケットは幸村が持っていたもので一緒に行く人を探していたと言う。今日行く展覧会に以前から行きたいと考えていたAは胸を躍らせていたため、中に入りガイドの音声を聞きながら幸村と小声で話すその時間は至高だった。

そんな時間を終えて、飾られていた絵画を用いたグッズが販売されている場所で2人は何を買うか吟味していた。

「かわいい、ポストカード部屋に飾りたいな」

「いいね、俺も欲しいな……あ、このマグカップとか良いんじゃないか？」

「え〜良い、迷っちゃうな……」

側から見ればさながらカップルだろうな、と瞳を輝かせながら話しかけてくるAを見ながら考える幸村だったが、彼女は目の前のものに夢中で気がついていないようだった。

ふと幸村の目に入ったのは綺麗な栞。思わず手を伸ばすとAの手と重なった。彼女はすぐに引っ込めてしまったが、幸村はそのまま栞を手にAへと顔を向ける。

「綺麗だよね」

「あ、うん…私もそう思う……」

指先が触れてしまい驚いたからか、はたまた知らないうちに距離が近くなっていたことに驚いたのか、語尾が小さくなっていくA。もうひとつ栞を取った幸村はそれを手渡す。

控えめにそれを受け取ったAは栞と幸村を交互に見つめて、買おうと思い持っていたポストカードの隙間へと差し込んだ。

「おそろい、してくれる？」

「お、思い出として…私も欲しいから」

「ふふ、ありがとう。こんなものかな？あぁ……」

「幸村くん？栞……」

Aの手元から再び栞を抜き取り自分の手元に加えた幸村。少しはそれらしいことをしたい幸村はそのままAの手を引いてレジへと向かう。不満があるAは服の裾をずっとぐいぐい引っ張って止めようとするが、止まってはくれないことは今までの言動を思い返しても明白だ。

意外と頑固と“お出かけとデート”の件でも思っていたがお金を払ってもらうことは流石に抵抗がある。それぞれ会計を終えて再び栞が手元に戻ってくるとAは財布を手に取るが幸村はそれを鞄へしまうようにと押し返す。

「俺がやりたくてやったんだから良いんだ」

「良くない」

「おそろいしたいって言ったのも俺なんだから」

「思い出として私も欲しいって言った」

「困ったな、意外と頑固なんだね」

「どの口が……」

しばらく見つめ合った後、2人の顔には同時に笑顔が浮かんだ。