No.008 ページ9
.
「ねぇねぇ、いつの間に総悟とあんなに仲良くなったの?俺とも遊ぼうよ」
「遊んでいたわけではありません、寝ていたので起こしに行ったんです」
「……と言うか」と、私は言葉を続ける。
殺風景な自室にて、さてどうするかと左右に揺れるアホ毛を見据えて溜め息をついた。私の視線の先には、遠慮知らずという言葉を体現したかのようにだらりとベットに寝転がっている神威の姿が。
頬を緩ませ、「おいでよ」と手招き。そこ、私のベッドなのだけれど……と言い掛けるも、ぐっと喉元で堪えて。可愛らしく唇を尖らせた神威が、彼特有の潤んだような瞳で此方を見つめ、構ってほしそうに口許をむにむにとさせていた。だが、ここで押し負けてはいけない……と自らを叱咤して。
「あの……すみません、寝たいので帰ってもらって宜しいですか?」
「宜しくないよ。暇だもん」
「それにさ、」と目を伏せて呟いた神威。
不意に先程までの可愛らしい笑顔とは一転、真面目で紳士然とした凛々しい顔の神威が不敵に微笑んで。柔らかく唇に弧を描いて。
「……総悟にばっか可愛いトコ見せてちゃダメだからね?男なんてみーんな狼だから」
「……神威はどちらかと言うとうさぎな気がしますけど。てか、ちゃっかりベッド占領しないで下さい」
「やだ」
本当に、この我が儘な彼をどう宥めようかと頭を捻るも良いアイディアは一つも思い付かない。拗ねた子どものようにぷくーっと頬を膨らませ、構ってくれないのと言いたげな目で訴えかけてくる。
「じゃあ、明日遊んであげますから」
「えっ、ほんと?」
小学校低学年並の言葉に、弾けたような笑みを見せた神威に、チョロいな、なんて心の裡で細く微笑んでいると。この時、気付けなかった私は大馬鹿者だ。その言葉の裏に潜んだ意味に、気が付くことができなかったのだから。
「へぇ〜……良い覚悟だね?てか、総悟にファーストキス取られちゃったんだし仕方ないかぁ……」
「なななっ、何で知ってるんですか!?」
「えー、そりゃあ見てたからだよ」
目を三度瞬く。それはまるで、神威の言葉を理解できないと言わんばかりに。思わず大声をあげてしまったため、遅まきながら口許を抑える。……が、静寂に包まれていた私の部屋に苦情の声は届かず。
「いや、そっちじゃなくって……いえ、そっちもですけど……!」
ファースト何たらの方なんですけど……と心の中で続けた私は、露骨を掌で覆いもう一度溜め息をついた。
.
408人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あるの(プロフ) - ささかさん» コメントありがとうございます、ささかさん!いつまでも待っていて下さるのですか?!ありがとうございます^^はい、できるだけ早く続編を作り直しますので、それまでは暫しお待ちください! (2018年1月6日 16時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
ささか - 作者さん、色々とお疲れ様!でも私はいつまでも待ってますから!ゆっくりでいいので続編作るの頑張って下さい! (2018年1月6日 15時) (レス) id: 94a7e06d27 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - たらぴさん» コメントありがとうございます!はい、念願の初殿堂入りを果たすことができました…!応援までありがとうございます^^たらぴさんのお言葉には励まされるばかりです! (2017年12月24日 17時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
たらぴ - 殿堂入りおめでとうございます!これからも頑張って下さい(^^)/応援してます! (2017年12月24日 17時) (レス) id: dcfd3554f9 (このIDを非表示/違反報告)
霰@あるの(プロフ) - 高杉るなさん» 了解致しました^^ご提案ありがとうございます!高杉さんと遊園地…とても素敵なお話ですね!できるだけ早めに執筆致しますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです! (2017年12月6日 7時) (レス) id: 26476dfb48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ