【銀魂】ウチのメイド。

No.029 ページ30

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「……すまねェ、……っ、」


あからさまに体調の悪そうな高杉さんは、千鳥足で壁に手をつきこちらを見つめた。……いや、体調が悪いと言うより酒の飲み過ぎ、と言うやつか。何時もの肉食獣を想起させる鋭い双眸はどんよりと虚ろで、お通やムードの高杉さんは二日酔いのサラリーマンの如く。反射的に肩を貸せば、だらりと体重を掛けてきた。「うっ……」と小さな悲鳴をあげるも、どうにか足を踏ん張り、声を掛ける。


「あの……どうしますか?お部屋まで送りましょうか?」


極力小さな声でそう尋ねると。二、三度唇を震わせてから呻くような呟きが発せられた。


「……頼む」


多分。予想だが、あの酒臭い空間から脱出したかったのだろう。柄にもなく泥酔していた高杉さんは、焦点を結ばない淀んだ瞳で俯いた。

本当は先程客間にいた見知らぬモジャモジャの事を訊きたがったのだが、この様子では無理だろう。ゆっくりと階段を上がり、一番右奥の部屋の扉を静かに開け……。


「……?!ちょ、大丈夫ですか?!」


……ぐらりと足場を踏み外した高杉さんは、最早意識が薄れかかっているのか立ち直ることなく床に倒れてしまい。その反動で、私も転倒した。ヒリヒリと痛む額を擦りながら、立ち上がろうと床に手をつき____。


上から覆い被さってきた何かに邪魔され、体勢が直せないのだが。そして、引き攣っているであろう私の顔をそーっと正面に戻すと。すーすーと小さな寝息をたて目を閉ざしていた高杉さんのドアップが飛び込んできた。さらさらと艶やかな黒髪が私の頬を擽り、漂ってきた爽やかな匂いについ意識が……ってダメだ、何考えてるんだ私?!


まずはどうにかしないと、万が一にも誰かに見られたら____!半分ほど開きかかった扉を一瞥し、掌に力を込めて押してみるも。


「う、動かない……!」


意外に筋肉質な高杉さんは、びくとも動かない。誰かに助けを求めるのもありだが、それだけは避けたいものだ。と、そんなことがぐるぐると頭に巡り、どうしようかと耽っていたとき。


「……A?何してるの?もしかして、」

「ちち違いますよ、神威!!別にやましいことをしていたわけではないのですから……!ですからそんな目で見ないでください!て言うか動けないんです!!」


蔑むような目で見下ろしてきた神威は扉からひょこっと顔を覗かせ、「羨ましい……」なんて呟きながらこちらに歩み寄ってきた。


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