番外編【一花】 ページ27
一花side
思わず鼻歌を歌ってしまう。そのくらい浮かれていると言われればその通りであり、隠す気もないのだけど、半歩後ろを歩く彼女の呆れた顔をが見たくてなんて言ったら、怒られてしまうだろうか。
ショッピングモールは、人見知りの彼女からしたらまるで地獄のようなものなのだろう。恥ずかしがり屋なのに私の手を握って離さないのはきっとそういうこと、うん、信じてる。
「……一花、いつまで見て回るつもり？」
「んー、もうちょっと。A可愛いから、どれだけコーデしても飽きないんだよね」
「はぁ……こういうの、二乃の担当だと思ってたんですけど」
「こういうのって、……ああ、着せ替え人形？」
「はい。一花はあまり人のいるところに行かない方がいいと思っていたので」
「そっか、気使ってたんだ」
照れながら頷いた。ああもう、可愛いこの子。
敬語を外して欲しいとお願いした記憶があるのだが、癖なのか中々取れないようだ。敬語混じりに私を見上げる姿がとても可愛らしいし嬉しいので、多分私はありえないほど単純である。
私のことを考えてくれていたのは嬉しいけれど、他の子の名前を出すのはちょっといただけない。面白くない、とでも言うのだろうか。
「……でもね、デート中に他の子の名前を出すのはNGだよ」
「どうして？」
「いいの？嫉妬に狂った狼さんに襲われちゃっても」
少し声を低くしてみる。無垢な瞳が一瞬だけ陰りを帯びた。それは恐怖なのか、それとも別か。その問いが喉元までせり上がってくることはなかった。妖しく笑った瞳は、期待に染まっていたからだ。
「いいよ、そんな狼さんなら大歓迎。やっとその気になった？」
「っ……、A？」
「敬語が外れないのなんて嘘。とっくにこう話せるようになってた。どんな経緯でも一花がその気になるように私は、頑張ってたんだけど」
「…………っ」
「……なぁんて、冗談です。帰りましょうか」
「……へっ？」
「狼さんでも、獲物を独りで食べれる場所に移動する知恵ぐらいありますよね？」
「ちょ、っと待とうか！Aさん……？」
「ああ、訂正しておきますね。一切ジョークのつもりはありませんでした」
それはつまり、私が手を出すのを待っていたことを肯定するということで。
顔から火が出るほど熱くなった私とは反対に、彼女は涼しい顔で歩く。どうやら彼女はまだ私より1枚上手なようだ。多分ずっと先まで敵わない。
終わり
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さな - まとめて最後まで読んじゃいました！主様の書く五等分の花嫁の小説大好きです！もしよければ四葉エンドでのお話もまた読みたいです！ (2021年12月14日 20時) (
レス) id: f790efa9f6 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - とっても面白かったです。もっとみたいです！ (2021年12月7日 8時) (レス) @page27 id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 莉奈さん» お褒めのコメントありがとうございます！四葉ちゃんですね、少々お待ちください！ (2021年1月30日 11時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 面白かったです！ごと嫁の百合ってあんま見ないので新鮮ですね！それから四葉ちゃんの番外編お願いします！ (2021年1月30日 11時) (レス) id: 5e6606bd3c (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 竹ちくわさん» ありがとうございます、お楽しみに！ (2020年8月10日 7時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくぜんに | 作成日時：2020年2月19日 10時
