第15話 ページ17
五月side
ザワザワ騒ぐ廊下。普段なら野次馬なんてしないのだが、聞こえてくる名前に知っている人が出てくるのは、さすがに気になると思う。
人だかりの隙間から中央を覗くと、5つ子の長女と茶髪の少女。一花とAさんはどうやら周りの注目を集めているらしかった。
「ね、Aちゃん行こーよ!」
「だから言ってるじゃないですか。今日は先約があるんです、一花ちゃん、また今度にしてもらえますか」
「えー、だって私、今日逃がしたら次わかんないんだよ?」
「分かってますよ、あなたは人気者ですから。でもダメです、今日はごめんなさい」
そうやって頭を下げたAさんに、一花はなおも食い下がる。戸惑った表情、それを和らげることができるのは、私も同じか。
「…一花、彼女が困っています。離れてください」
「あれ、五月ちゃんだー。どしたの、嫉妬?」
「なっ…!?違います、Aさんが困ってたから!そもそも、廊下の真ん中で何してるんですか!?」
「あ、ほんとだ!やっば…人集まって来ちゃってたか〜…」
「気づいてなかったんですか?……Aさん?」
俯いた彼女が、私たちの袖を引いていた。一花の顔が驚きと焦りで埋まる。多分、私の顔も。
そうだ、なぜ忘れていたんだろう。
彼女は人見知りではなかったか。ならば、人混みは苦手だろう。
自然と私たちに接する彼女しか見えていなかった。気づかなかった。
好奇の目で彼女を見る大衆に、一花の怒りが募るのが分かった。もちろんそれは私も。
中野一花という姉のブランドに、Aさんは邪魔をされているのだ。
「…Aちゃん、ごめんね」
「なに、がですか……」
「これからすること、後で怒られても文句は言いませんから」
考えることは、2人同じだった。
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さな - まとめて最後まで読んじゃいました!主様の書く五等分の花嫁の小説大好きです!もしよければ四葉エンドでのお話もまた読みたいです! (2021年12月14日 20時) (レス) id: f790efa9f6 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - とっても面白かったです。もっとみたいです! (2021年12月7日 8時) (レス) @page27 id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 莉奈さん» お褒めのコメントありがとうございます!四葉ちゃんですね、少々お待ちください! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 面白かったです!ごと嫁の百合ってあんま見ないので新鮮ですね!それから四葉ちゃんの番外編お願いします! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 5e6606bd3c (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 竹ちくわさん» ありがとうございます、お楽しみに! (2020年8月10日 7時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくぜんに | 作成日時:2020年2月19日 10時