第12話 ページ14
Aside
「…ねえ、三玖さん」
「…なあに?」
「恋愛って、なんでしょう」
「………」
三玖さんが無言で私を見てくる。少しだけ閉じられた瞳が真っ直ぐに私を貫き、なんだかいたたまれない気持ちになる。
「あの…答えられないのなら、無理には……」
「………名前、」
「え?」
「ちゃんと、約束したように呼んで。そうしたら教えてあげる」
知りたいんでしょ?そう耳元で囁かれる。横から覗けば、ついさっき見たような顔。人のことを弄ぶように意地悪な笑い方をしているけれど、どこか余裕のない表情。
強い意志の横に感じるのは、大きな勇気。
だったら私も、彼女に答えなければ。
「…三玖、ちゃん。教えてください」
「……これ。私がAに、名前を呼ばれた時に感じる暖かい感情。好きだなぁって思って…特別なのかなぁって自惚れて。
それでもやっぱり、Aの1番は私じゃない。そうやってちょっと胸が苦しくなって…振り向いて欲しいなって思うのが、恋」
「三玖ちゃん……?」
「好きだよ、A。名前を呼ぶれるだけでも、ドキドキする。だから私にとって、Aに感じるこれが恋なんだ」
溶けてしまいそうなくらい、体が熱い。熱くなるけれど、苦しくなるけれど。どこかやっぱり、冷静な私がいる。
「……ねえ、A。ドキドキした?苦しく、なった?Aの心に…私はいる?」
「……私は」
「いない、でしょ。でも……Aにも、そう思える人がいる。だから私に、聞いた」
「……ごめんなさい、傷つけるつもりじゃ………」
なかったんですけど。その言葉は喉の奥に消えていった。私は目の前の彼女を一切気づかうことが出来なかった。悲しそうな顔だって、させなくて済んだろうに。
「いいよ、別に。でも、諦めるつもりないからね」
「…三玖ちゃん」
「夢中になってくれるまで、ね」
彼女はそう言って部屋を出ていく。やっぱり5つ子なんだなぁ。
だってあんなに、あの人に似てる笑い方。
まだ胸が、リズムを刻んでいる。
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さな - まとめて最後まで読んじゃいました!主様の書く五等分の花嫁の小説大好きです!もしよければ四葉エンドでのお話もまた読みたいです! (2021年12月14日 20時) (レス) id: f790efa9f6 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - とっても面白かったです。もっとみたいです! (2021年12月7日 8時) (レス) @page27 id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 莉奈さん» お褒めのコメントありがとうございます!四葉ちゃんですね、少々お待ちください! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 面白かったです!ごと嫁の百合ってあんま見ないので新鮮ですね!それから四葉ちゃんの番外編お願いします! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 5e6606bd3c (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 竹ちくわさん» ありがとうございます、お楽しみに! (2020年8月10日 7時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくぜんに | 作成日時:2020年2月19日 10時