検索窓
今日:7 hit、昨日:9 hit、合計:55,513 hit

第12話 ページ14

Aside





「…ねえ、三玖さん」


「…なあに?」


「恋愛って、なんでしょう」


「………」





三玖さんが無言で私を見てくる。少しだけ閉じられた瞳が真っ直ぐに私を貫き、なんだかいたたまれない気持ちになる。





「あの…答えられないのなら、無理には……」


「………名前、」


「え?」


「ちゃんと、約束したように呼んで。そうしたら教えてあげる」





知りたいんでしょ?そう耳元で囁かれる。横から覗けば、ついさっき見たような顔。人のことを弄ぶように意地悪な笑い方をしているけれど、どこか余裕のない表情。


強い意志の横に感じるのは、大きな勇気。


だったら私も、彼女に答えなければ。





「…三玖、ちゃん。教えてください」


「……これ。私がAに、名前を呼ばれた時に感じる暖かい感情。好きだなぁって思って…特別なのかなぁって自惚れて。

それでもやっぱり、Aの1番は私じゃない。そうやってちょっと胸が苦しくなって…振り向いて欲しいなって思うのが、恋」


「三玖ちゃん……?」


「好きだよ、A。名前を呼ぶれるだけでも、ドキドキする。だから私にとって、Aに感じるこれが恋なんだ」




溶けてしまいそうなくらい、体が熱い。熱くなるけれど、苦しくなるけれど。どこかやっぱり、冷静な私がいる。





「……ねえ、A。ドキドキした?苦しく、なった?Aの心に…私はいる?」


「……私は」


「いない、でしょ。でも……Aにも、そう思える人がいる。だから私に、聞いた」


「……ごめんなさい、傷つけるつもりじゃ………」





なかったんですけど。その言葉は喉の奥に消えていった。私は目の前の彼女を一切気づかうことが出来なかった。悲しそうな顔だって、させなくて済んだろうに。






「いいよ、別に。でも、諦めるつもりないからね」


「…三玖ちゃん」


「夢中になってくれるまで、ね」





彼女はそう言って部屋を出ていく。やっぱり5つ子なんだなぁ。


だってあんなに、あの人に似てる笑い方。


まだ胸が、リズムを刻んでいる。

第13話→←第11話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (52 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
87人がお気に入り
設定タグ:五等分の花嫁 , 女主 , 百合
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さな - まとめて最後まで読んじゃいました!主様の書く五等分の花嫁の小説大好きです!もしよければ四葉エンドでのお話もまた読みたいです! (2021年12月14日 20時) (レス) id: f790efa9f6 (このIDを非表示/違反報告)
天霧(プロフ) - とっても面白かったです。もっとみたいです! (2021年12月7日 8時) (レス) @page27 id: 29b58b93c0 (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 莉奈さん» お褒めのコメントありがとうございます!四葉ちゃんですね、少々お待ちください! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)
莉奈 - 面白かったです!ごと嫁の百合ってあんま見ないので新鮮ですね!それから四葉ちゃんの番外編お願いします! (2021年1月30日 11時) (レス) id: 5e6606bd3c (このIDを非表示/違反報告)
ちくぜんに(プロフ) - 竹ちくわさん» ありがとうございます、お楽しみに! (2020年8月10日 7時) (レス) id: 8315f66856 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ちくぜんに | 作成日時:2020年2月19日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。