傾国。【鬼滅の刃 : MHA 】 (ページ8)

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義父、という立場であるのに、義娘である彼女と居ると如何にも調子が狂う。

それは"前世の俺"も一緒だが。

こうして話す機会自体、少なくは無いが、如何にも空気が強ばって仕舞い、二人の時は一向に明るい雰囲気が訪れないのだ。

そんな状況にさえも特に何も思わず、悪くは思わないが、何故か好きにはなれない。

俺のデスクの近くまで、丸椅子を持ち出して来ては、それに腰を掛ける彼女。

少し視線を彼女へと移せば、すぐさま視線を外され、目を逸らされて仕舞う。

俺はそんな小さな事を気に留めて居る訳では無いが、何処か虚しく思える事がある。

少しでも話し易い状況にする為、俺は一度席を立って、食器棚を開ける。

アールグレイティーのスティックを開封し、取り出したティーカップの中に、粉末を流し込んでは、カップの3分の2程度まで湯を注いだ。

『……生クリームで良い？』

彼女にそう問い掛けると、俯きながらも小さく頷いた。

今日はそういう気分か、なんて考えつつ、液状の生クリームを少量、アールグレイティーにに注ぎ、マドラーで軽くかき混ぜる。

彼女が気に入っているドライフルーツのはちみつ漬けも出してやろうと思ったが、生憎それを切らして仕舞っていた事を、俺は忘れていた。

『ごめん。はちみつ漬けドライフルーツだけ切らしてるから、また漬けとく。…はい、今日はこれで我慢して。』

ソーサーに乗ったティーカップと、レモンとオレンジとナッツの、種類豊富なはちみつ漬け、そして生チョコが数個乗った皿を、トレーに乗せ、彼女の元まで持って行く。

こうして、彼女にちょっとしたおやつをご馳走し、お茶会のようなノリで少し話をする事が日課だ。

だが然し、雰囲気は如何にも明るくならない、それほど暖かい訳でも無い。

ただ彼女が黙々と、軽食を咀嚼し紅茶を啜る、と言った小さな音だけが、静かな保健室に流れる。

彼女はいつも、俺との食事、また俺が目の前にいる状態で食事をする際は、一言も話す事無く、全てをあっという間に平らげるのだ。

俺はそれだけが心よりの疑問だった。