傾国。【鬼滅の刃 : MHA 】 (ページ7)

今日:19 hit、昨日:4 hit、合計:396 hit

壱ページ7

:

某日の夕刻、保健室にて。

共に仕事をしている老女、"リカバリーガール"は先に定時で上がった。

その為俺は一人寂しく、とある資料を作成する事にしたのだ。

自身のデスクを前に、レザーチェアに脚を組みつつ腰を掛ける。

学生の頃から変わらず愛飲している、ドリップコーヒーを熬れては、その香りを楽しみつつ、コーヒーカップに口を着けた。嗚呼、やっぱりこれが一番美味い、熟々そう思う。

少し重かったような気が楽になり、仕事を再開しようと、丸渕の眼鏡を装着し、パソコンのキーボードに向かい手を伸ばしては、カタカタと音を鳴らす。

そうして居ると、保健室の扉がガラガラと音を立てて開いた。

こんな時間に来客か、そう考えながらもパソコンから目線を外すこと無く作業を進める。

壁に掛けられた時計の短針は、6の字を指そうとしていた。

そんな時、

「……雪絃、まだ居たのね。」

静かな保健室に、凛としながらもやや高い、鈴を転がしたような声が響いた。

『…月城先生、だろう？胡蝶さん。生徒が教師を呼び捨てるだなんて関心しないなあ。君こそこんな時間に如何したんだい。此処へ用が有るのかな？』

そう、その声の主は、俺の義娘、また年齢的には義妹に当たる胡蝶しのぶだった。

「…他人行儀は止しなさいよ。今は私とあなたの二人しかいないわ。」

『あﾞ〜、。はいはい、判った判った。』

如何にも彼女はこの態度が気に食わないらしい。

他人行儀に接しているつもりは無い。ただ此処では"教師"と"生徒"といった関係性なのに変わりは無い。

だからこそこうして接して居るのに。

嗚呼、調子が狂う。

俺はそう考えながら、乾いたような軽薄な笑みを浮かべて誤魔化しつつ、緊迫した場の空気を解そうとした。