傾国。【鬼滅の刃 : MHA 】 (ページ14)

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視点＿緑谷出久

月城先生は、本当に不思議な人だ。

それほど名高く有名なヒーローではないけれど、とても優しくて、穏やかな人。

人間として、出来上がっているような人だ。

彼があれほど強い人だとは思わなかった。綺麗な見た目に反して、でもないけど、凄く綺麗でムダも隙も無い戦い方をしている。

それも脳無を再起不能にするほどの力…。

頭の回転も凄く速い。

僕はそんな彼の背中を見て、無意識の内に憧れを抱いていたのかもしれない。

少し変わった人だけど、僕は彼の"ヒーローらしさ"ではなく、"人間としての聡明さ"に惹かれた。

思わず見蕩れてしまうような横顔は、直視できないほどに綺麗で、

僕の手には、届かないようにも思えたんだ。

『君の状態(タネ)を全て明かした代わりにだ。俺の今ある状態を教えてあげようか………否、その必要は無いか。何より無駄口に過ぎないからね。』

そう言って、彼は脳無の脳天に向かって氷の剣を振り下ろし、脳無を息絶えさせた。

彼は、"殺める"といったことに躊躇が無いようにも見えて、僕は少し怖くなった。

だけどこれが、あるまじきことだとしても、きっと、そうした手を下さなければならないこともあるんだ。

僕はそう思った。

これが、"プロの世界"。

改めてそう実感をした。

彼は息絶えた脳無をそのまま軽く一蹴し、死柄木(ヴィラン)の元まで足を進める。

かつり、かつり…と、静かなこの場に鳴り響くヒール音は、緊迫感を催す。

立ち聳えるヴィラン達に臆することなく、しゃん、と姿勢を整えたまま歩み、一定歩数進んだところで足を止めた彼は、口を開いてこう述べた。

『我々正義(ヒーロー)にとって、君達不義(ヴィラン)は、この世から除けなければならない存在。だがそれも然り、君達ヴィランから見たヒーローは不義的存在なのだろう？？だからこそ、人間という者共は無謀な争いを続け合って仕舞う。其れがどの様な理由で有れど、人間は必ずと云って良い程、争う事を手に取り選ぶんだ。それ故の同族嫌悪が起こる事によって、善と悪、それぞれの立場に頒(わか)れ行く。』

そう、彼が発した言葉は、何処か難しいながらにはっきりと理解が出来るものだった。