陸ノ段【総てを見透かすような瞳】 ページ7
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先程の彼の思考は傍から見れば無礼、また失礼な、などと思う事だろう。
だが然し彼は中々の性格をして居る。端的に言えば非常に性格が悪い。だからこそ人を揶揄う事や、人の弱味を握る事が最高の嗜好なのである。
かなり重要なこと故にもう一度言おう。
彼は非常に性格が悪い。(重要)
某悪役令嬢も驚く程の性格の悪さを持つ、悪女ならぬ悪男、正しく悪役令息である。
善人を繕う事など彼にとっては非常に容易い事で有り、綺麗事を並べてばかりの根っからの善人を見ると、些か滑稽に思える程であるのだ。
これ以上例を挙げずとも、性格の悪さが滲み出て居る事はよく解る。
それでも尚、彼は自身を善人として取り繕い、自らを善人だと称すのだ。
その一例だけでもよく理解出来るだろう。
彼はとんだクズである。(重要)
頭脳明晰であるにも関わらず、脳の使い方を履き違えて居る、否、それも全て意図的である事も事実だ。
何度も言うが彼は非常に性格が悪いのである。(n番煎じ)
「…天女様、先刻は大変失礼致しました。学園に到着し次第、再度お話を聞く形にはなりますが…お手を煩わせてしまって申し訳有りません…。お詫びの方は後程させて頂きますので………。」
先刻、老け顔の青年を凄い力で殴ったサラストの青年が、彼に向かってそう声を掛ける。
然しながら残念だが。彼は天女では無い。
そもそも性別を違えている。
彼は"天女のような美しい男"という形容が似合うだけであり、"天女"そのものでは無いのだ。
どう足掻いても彼は男だ、これこそが現実である。
『…いえ、詫びなどは必要有りません。其れに貴方達は天女を"捕えに来た"のでしょう??でしたら収穫を得ねばならないなど当たり前です。其の収穫の対象である私に対し、上辺だけの気遣いで詫びを申した上で絆そうなどと、甘い考えはしない事ですね。私は其の様な手に嵌められるような、単純な人間では無いので。』
青年の言葉に対し、にまにまと妖艶に微笑みながら、柔らかな声音でトゲのあるような、辛口な言葉を投げ掛けた彼。
"詰めが甘いですよ〜。" なんて、彼らを煽てるような言い草を添えれば、穏やかながらに軽薄な表情で、けらけらと笑うのだ。
そんな彼の呑気で捻じ曲がった性格に、振り回されるような彼らは、またもや唖然とする事しか術が無かった。
(異端たる存在。)
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作者名:ゆづ。 | 作成日時:2024年1月18日 23時