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肆ノ段【知り得る筈の無いコト】 ページ5

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" 嗚呼、つまらない。 "




戦闘中に兎や角何かを考える事は法度とも言えるが、この男は随分と余裕気である。

先程から自身を弑しに掛かっている者達の動き、それから装いからして、忍衆では無いかという事に気が付いた彼。

それを察しても尚、彼らの攻撃を無情にも涼しい顔をして躱し、受け流しの動作を続ける。

そんな彼の心情としては、如何にも言い換える術が無い。だだ面倒、という事だろう。

傍から見れば斬って仕舞えば良いのに、とも思える状況だが、彼はこの刀で人を斬る気は微塵も無いようで。

気絶をさせるにしても、彼らは忍。そう易々と手刀を食らってくれよう相手では無い。

だが然し彼からしてみれば、彼らの実力は並の鬼殺隊士の者にも及ばない程度だろう、と考えて仕舞う程だ。

下手をすれば弑し兼ねない、そう確信を得た彼は、やむを得なく彼らの目的を聞き出そうと考えたのである。

刀を鞘へと納め、両手を軽く耳元辺りまで持って来るようにして挙げては、相変わらず柔らかな笑身を浮かべつつ、言葉を紡ぎ始めた。



『……止めです、止め。これ以上に戦う必要は無いと見ました。何せ私自身も飽き飽きして参りましたし。………そんな話はよしとしまして、本題ですが…____』







『 貴方達の"目的"は、何なのでしょうか。 』






そんな返答を促させる様なその声に、忍衆の彼らは、ぴたりと動きを止める。

暫く沈黙が流れ続いた空間を切り裂くようにして、低く重圧さのある声音で発せられた言葉は____





「……この山に一筋の閃光のような、眩い一閃が、縦一直線上に轟いたんだ。それも強烈な音を立てて。その得体を"天女"だと仮定した俺達が、天女を捕えにこの山へ足を踏み入れた。そして光の轟いたであろうこの場所に、お前の姿があった。だとしたら辻褄が合うと考えたが故に、お前を天女だと断定した。ただそれだけの話だ。」





そう、それは彼の想像を上回る世にも奇妙な事だと、考えざるを得ないようなものだったのだ。

忍衆が天女を捕らえる、何とも言えぬ想像し難い絵面だが、よくよく考えてみると此処は"大正時代(自身が生き抜いた時代)"では無いようだった。

大正時代、否、明治時代後期に、忍衆は存続の危機に迫られ、最終的にその血さえ途絶え切って居る筈だ。

そう考えれば考える程、彼の中で謎は深まるばかりだった。










(謎は何処までも深まって。)

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作者名:ゆづ。 | 作成日時:2024年1月18日 23時

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