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参ノ段【遭遇戦の鬨が鳴り響く】 ページ4

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四半刻程経っただろうか。

…否、四半時足らずか。

そんな思考を脳裏へ持ち去りつつ、暗く欝蒼とした深い森の道無き道を踏み締めて、先に進もうと歩み続ける。

そんな時だった___



『…………密か、、否、随分と露骨な殺気ですね。』



そう、自身に向けられて居るであろう、この異様な殺気。

先刻から些か嫌な予感はして居たが、まさか突き刺される様な視線を感じる事が、気の所為だと気楽に考えて仕舞って居た。

だが然し彼は、たかがそんな小さな事で臆する(タチ)の男では無いのだ。

そう確信を得ながらして、口角を上げて微笑んでみるそれは、微睡みを帯びた極上の妖艶さを纏う、魅惑の笑みであった。


___刹那、



シュバッ、



彼を囲うようにして監視を続けて居たのだろう、それがよく判る攻撃を仕掛けて来たのだ。

全方向、それも六角形を描いた様な形式で、各方向から5、6本程度の数の苦無が、彼に牙を剥くようにして襲い掛かろうとした。

その時、彼は瞬間的に極々短い合間を上手く利用して、神速とも言えよう速度で抜刀した直後……



『___冬の呼吸、漆ノ型…』






『 氷華永麗 』






舞い踊るような足取りで身体を畝らせては、自身自らを重心として、勢い良く刀を振るったのだ。

勿論の事、彼に向かって飛んで来た苦無は全て弾き飛ばされた。

…事後、静かに刀を鞘へと納刀する彼。

その立ち振る舞いでさえも、美しく思えるものである。

そんな彼に突き刺す様な鋭い視線を向け、隠れた場所から凝視し始める者達が居た。



「………貴様は何者だ、この世に在らず者か。」



静寂の占める空間に緊迫感を与える声音で、発せられたその問い掛けに、彼は面白可笑しく思ったのか、くすり…と、小さく微笑みを零す。



『…否、私は人間ですよ。"世に在らず者"とはどう云った者の事を指すのです??』



何処か軽薄ながらに穏やかな表情、その裏に冷淡を飼って居るような笑みを浮かべる彼は、場の雰囲気を問わず、けらりと美しく笑うのだ。

そんな言動が、彼等六人の逆鱗に触れたのだろう。

身を隠して居たであろう木々の間から姿を現した、常磐の忍装束を身に纏う少年達が、六方向から一気に彼に向かって攻め掛かって来たのである。














(戦闘開始。)

肆ノ段【知り得る筈の無いコト】→←弐ノ段【夢覚めの靄は晴れぬまま】



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作者名:ゆづ。 | 作成日時:2024年1月18日 23時

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