Mark-隣人編 ページ9
(マークside)
MK「……あ、運転手さん、止まって下さい」
運転手「いいんですか？」
MK「はい、同じマンションの方なので、」
運転手「ありがとうございます」
タクシーの後部座席から見えた、タクシー待ちをしている女の人
「お願いしま……って、あ、同乗ですか？」
運転手「そちらのお客様が、同じマンションの方だと仰っていたので…」
「……え、あれ？マークくん？」
MK「後ろどうぞ！」
「うん、そうする」
彼女は、同じマンションの…隣の部屋のAさん
僕よりひとつ上で、仕事をしていて
「マークくん、ダンス終わり？」
MK「はい！」
「いつかマークくんのダンス見たいなあ」
スーツを綺麗に着こなして、携帯じゃなくて腕時計で時間を確認するAさんは…
僕の片想いの人
運転手に止めるように促したのは、同じマンションだったからっていう理由だけじゃなくて
それがAさんだったからっていう理由もある。
「夜にマークくんと会うのは初めてだね」
MK「……そうですね」
「朝は出る時間が同じな事多いもんね」
タイトスカートから出る白い脚
長い髪を耳にかける仕草
ほのかに香るきつくない、甘い香水の匂い
そんなものを見てはドキドキする自分に「変態」と心の中で喝を入れて、
出来るだけ見ないように窓の外を眺めた。
.
MK「……え、」
暫く窓の外を眺めていると、急に肩に重みがかかって振り向くと
MK「…待って、」
寄り掛かっているのはAさんで。
運転手「お疲れのようですね」
どうしようかと悩んでいると、鏡越しにこっちを見て笑った運転手さんの言葉に
"起こしたらダメなやつだ"
と確信した。
見ないように見ないように と避けていた自分の想い人が密着していて、せっかく落ち着き始めた心臓も再び激しく鳴り出した。
運転手「…お似合いですね」
MK「いや、ちがっ」
運転手「彼女さんも幸せそうな顔して寝ていらっしゃる」
MK「え？」
思わぬ言葉にAさんの顔を覗き込んでみると、確かに、少しだけ口角が上がっているように見えて
安心しきった顔をしていた。
「ん…」
柔らかい頬をそっと撫でると、肩に擦り寄るようにして顔を動かす。
MK「…そんなに安心されても困るよ、」
僕だって男
しかも貴方を好きな男
……でも、今だけ
いつも会う朝じゃない、今この夜この瞬間だけ
MK「…彼女、」
俺の恋人になってください
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作者名：よよよ | 作成日時：2023年12月14日 11時
