【続々】どうか貴方達に、幸せの花束を。 (ページ7)

今日:41 hit、昨日:70 hit、合計:4,829 hit

探していた人ページ7

No side

あの日。黒の組織によるパシフィック･ブイ破壊の大規模な事件が起きた日から、数ヶ月。季節は巡り、日差しの眩しい夏へと変わった。

未だに、あの日消えた彼女の情報はない。コナンが彼女の腕を信頼し、ピンガを追うのを任せたが、その後消息を絶った彼女を、コナンも蘭も哀も少年探偵団も探している。

安室透、バーボン、そして降谷零という3つの顔を持つ彼もまた、その1人だ。空港で会い、バーボンとしてパシフィック･ブイに潜入した時に見ただけの彼女ではあるが、どうにも頭から離れないのだ。

自分の仲間を、親友を救い出してくれたあの人に、

追い求めていたあの子に、重なるのだ。

そんなはずは無いのに。

可能ならば、今すぐにでも公安としての仕事も、ポアロのバイトも、黒の組織の情報屋も、全て投げ出して彼女を探すことだけに専念したい。それほどに、彼女が気になって仕方がなかった。

そんな彼は今、バーボンとして、黒の組織のセーフハウスの1つに、キールと共に呼び出されている。呼び出したのはベルモット。

互いに潜入捜査官であり、CIAと公安警察として協力関係にある間柄である2人。尚且つ以前ジンとベルモットにノックとして殺されそうになったこの2人が、また呼び出されるとは。いっそう警戒をしなければならない。

東都から程遠い山奥にひっそりと建つセーフハウス。バーボンとキールは互いに目を合わせ、頷きあってから扉を開いた。

目に飛び込んできたのは、黒に統一されたロビー。その中のソファーにぽつん、とある白。その相対的な色の組み合わせに一瞬何事かと思ったが、よくよく目をこらす。

黒くて艶やかな長い髪に、真っ白なワンピース。それが人であり、女性であることに気がついた2人は、またベルモットの変装か、とそれに近付いた。

だが。

その隣に座る銀色に気が着いた瞬間。

「……ジン？」

「＿＿＿＿＿っ、？」

ベルモットにしてはやけに密着しているな、と声をかけた先の女性が、ゆっくりと振り返る。

さらりと揺れる黒い髪、

陶器のような白い肌、

頬と唇は桃色に薄く色付き、

女神を彷彿とさせるような真っ白なワンピース。

この黒い場所には不釣り合いで、だがそれゆえ際立って目立つ目の前の女性は。

「＿＿＿＿きみ、は……」

「……、？」

あの、渋谷での日。

血痕とともに消え失せた、

探し求めていた人。

その瞳には、あの時のような感情は何一つ乗っていなかった。