【続々】どうか貴方達に、幸せの花束を。 (ページ5)

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真っ黒な服装に、時々聞こえる物騒な単語。おそらくヒスイさんやベルさんの仕事は表の仕事では無いのだろう、と気付きつつ、私を拾ってもらった上に手当てをしてもらい、お世話になっている恩があるため、そのまま流れに身を任せていた。

そんなある日。あてられた綺麗な部屋で慣れたように目を覚まして、用意されている真っ白なオフショルのワンピースに袖を通す。肩に見える薄い傷跡を隠すように、これまた白い薄いカーディガンを羽織る。

お医者様に聞いたところ、私の記憶喪失の原因は、頭部の強打だという。拾って手当をしてくれたベルさんとヒスイさんは何か事情を知っているっぽかったけれど、教えては貰えなかった。

そんな頭の傷も塞がり、肩やお腹の包帯もとれた少し回復した体を解すように肩を回すと、こんこん、とノック。

「いいか」

「はい」

たった一言だけれど、ノックと足音で分かっていた私は、そのままドアを開ける。綺麗な銀と緑をのぞかせるヒスイさんが、満足気に笑った。

「………よく似合ってるじゃねぇか。まるで天使のようだな」

「…ありがとうございます」

月に飛んでいってくれるなよ、と言う意外にもポエマーなヒスイさんに曖昧なお礼を言う。それはかぐや姫では？

いつも服を用意してくれるのは、ベルさんだ。本人は常に黒い服を着ているけれど、彼女は私には絶対に白い服を用意する。それを本人に一度尋ねたことがあるけれど、「セレネに黒は似合わないわ」と困ったような寂しいような顔をされてしまってから、何も言わずにいる。セレネとは？ヒスイさんも白をリクエストするし、何事？と思っているが、口には出さない。

「今日は少しやることがある」

そう口にした彼は、そのまま私の腰を引いて、ロビーのソファにドカリと座った。無言でぽんぽん、と膝を叩くヒスイさん。逃げたい衝動を抑え無言で横向きにその上に座れば、肩を引き寄せられて彼の首元にもたれる。

ヒスイさんは、何かを作業する時、必ず私を連れてロビーに行き、横に私を座らせて作業をする。今だって左手で私を引き寄せたまま、右手でなにかの書類を読んでいる。

最初は突然のエスコートにビビり散らかし、逃げ出そうと必死だった。だが何度やってもヒスイさんはずっと私を隣に置き、膝に乗せ、抵抗しても逃げられないため、いつの間にか私も慣れてしまった。良くない傾向だね。