【続々】どうか貴方達に、幸せの花束を。 (ページ3)

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翡翠ページ3

私のその言葉に、目の前の美女はくしゃりと顔を歪めてしまった。どうして、と呟いて、その場に崩れ落ちる。

きっと私を大切に思ってくれていたのだろう。悲しんでくれているのだろう。

だけれど、私の記憶は警察として働いていた頃ぐらいしか覚えていない。そして、勤務中の事故で意識を失ったところまで。きっとそれで、私は記憶喪失になってしまったのだろう。

そして、さらに不可解なことに、今の私は幾分か若くなり、髪も長くなり、華奢になって、私であって少しだけ違う状態になっていた。これが私が眠っていたが故の変化なのかは、定かではない。

「…頭は痛むか」

ふと、男がベッドの横まで来た。さっきまで構えていた拳銃はいつのまにか仕舞っていて、銀の髪から覗く男の緑色の目が私をとらえる。

「…少し」

「体調は」

「大丈夫、です」

闇を纏う風貌からは想像できない私を心配する言葉。彼は側に膝を着いて、私の手を取った。白く、とても鍛えているとは言えない細い私の手。

壊れ物を扱うかのように触った彼は、ふ、と息をついた。

その安心した、というような顔に、空いている方の手をそっと伸ばす。呆気なく彼に捕まった私の手を、彼はそのまま自分の頬に持っていった。

冷たい頬。

かち合う目。

そのこちらを見つめる緑の目が、ひどく優しくて。

だけどやけに寂しげで。

泣いているように見える、綺麗な緑の目。

「＿＿ヒスイ、」

「……！っ、」

ぽろり、と口からこぼれた色の名前に、目の前のジンと呼ばれていた男はぴくりと体を揺らした。

「…あぁ、」

やけにすんなりと出てきたこれは、どうやら彼の名前のようだ。

もっと、というように私の手に頬をすり付ける目の前の成人男性。否、少し懐いた猫のよう。

近い距離感に、一瞬目の前の彼は私の好い人なのかと思ったが、違うのだろう、と本能が言っている。私と彼は、どんな関係だったのだろうか。

「＿＿A、」

紡がれたそれが、私の名前なのだろう。