WASABI (ページ9)

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『本当はさ、』

ああ、来てしまったと思った。
全部全部知ってた。誠也くんが私のことを好きなことも、
私が誠也くん無しだと生きられないことも。
きっと誠也くんも全部わかっていると思う。

アイドルの誠也くんとは、きっと住む世界が違う。
付き合ってはいけない誠也くんと友達でいるために色んな人と付き合った。

悩み相談と称して、誠也くんの声が聞きたかっただけだった。
声が聞きたいだけのために誠也くんに電話をかけた。

私が誰かと付き合っていれば、友達でいられると思っていた。

『なぁ、俺にしとかん？』

そう言われて、彼を見ると真剣な眼差しでこっちを見ていた。

私もずっと好きだった、そう言えたらどんなに楽だろうか。

「、、、誠也くん」

『ん？』

「アイドルみたい笑」

『、、、アイドルやわ』

そう言った彼の顔は、見れなかった。
見てしまったら、見てしまったら目の奥に溜まって居るであろう涙がこぼれてしまう気がしたから。