WASABI (ページ2)

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「でね、結局許しちゃってさ〜」

結局いつもこのパターン。俺の言葉なんて何ひとつも聞いてない。スマホから聞こえる声はご機嫌そのもの。
結局あの電話の日から3日後、また電話がかかってきて出てみれば案の定、彼と仲直りしたって話。

アホやな〜って思う。俺もあいつも。俺にしといたらそんなこと言わせないのに俺を選ばない、あいつはアホやし
選ばれないってわかってて、都合のいい男でいる俺もアホや。
辞めなきゃって何度も思った。
たまに来る電話に心躍らせて、別れろって俺の言葉に頷かれる度に期待して、結局は仲直りしました〜って言われる。

「誠也くん、本当にありがとう。誠也くん居ないとダメだな〜。私」

ほら、またそーゆーこと言うんや。

『そんな事ないやろ、彼氏おるやん。』

「それとこれとはまた別」と笑うAに心の内を全部打ち明けたくなる。

『あの、、、、、さ』

「なに？笑改まってどーしたん笑」

案外、でも、このタイミングだったりして？

『いや、笑なんもないわ。』

「なにそれ、変なの」

そう言いながら、また彼氏の話を始めるA。
次はここに旅行に行くだの、なんだの。そんな話を聞きながら俺は右手に持ってるタバコに火をつける。

「また、吸ってるでしょ。辞めなよ、そろそろ」

『考えとく、、』

あいつの話聞いてるとどうしても吸いたくなるこれ。
口の中に広がる苦い味が、自分の心を体現してるかのようで苦しくなった。

別に誰かのモンだって好きになるのは俺の勝手やろ？
俺は別に気にせんけどな。

『俺が好きって言ったらどうする？』

「え、、、、？なに急に」

電話越しでも分かるくらい、ビックリしてるAに何故か笑いが込み上げてくる。
多分きっと、口を開けてビックリしてんねん。いっつも、そうだから。

『嘘やけどな。』

「なにそれ、、びっくりしたぁ」

たまには不意打ちで仕掛けたっていいやろ。別に取って食おうって訳じゃないし。